マラプロピズム:音の似た言葉の言い間違え
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マラプロピズム まらぷろぴずむ malapropism

『七人のナナ』1巻142〜143ページ(今川泰宏・国広あづさ/秋田書店 少年チャンピオン・コミックス)
  • 期末テスト
  • 日本史
  • 生活指導「では
  • テスト始め——」
  • ——ここ8コマ飛ばします——
  • ナナ「えっおォ
  • 日本にキリスト教を
  • 伝えたのは…
  • サンフランシスコ=ザビエル
  • カンターン」
  • クラス一同「違————う」
  • (手が勝手に……)
-『七人のナナ』1巻142〜143ページ(今川泰宏・国広あづさ/秋田書店 少年チャンピオン・コミックス)
  • 定義重要度2
  • マラプロピズムは、音の似たことばの言い間違いをする、というレトリックです。

  • 効果

  • 効果1ユーモアな感じを伝えたり、滑稽さを出す

  • 「マラプロピズム」は、(ワザとであるにしても、本気で間違えたのであるにしても)誤りであることを言うものです。そのため笑いを誘う、おもしろいものができあがります。
  • キーワード:滑稽、下らない、ナンセンス、バカらしい、おもしろい、おかしい、楽しい、愉快、わくわく、おもしろい、ユーモア、冗句、洒落、駄洒落

  • 効果2無知や生かじりをあらわす

  • 「マラプロピズム」の使い手は、ことばを知ったかぶりをして使うことに原因があります。ですので、無知や学の衒いを表すことになります。
  • キーワード:無知、浅学、浅はか、生かじり、生半可、半可通、無学、無教養、学の衒い、衒学、無教養、空いばり、生かじり、気取り、気取る
  • 使い方
  • 使い方1発音が似ているので言いまちがえる

  • もともとの単語がもっていた音に近い、それでいて意味がまったく離れている単語を使う。それが「マラプロピズム」です。
  • 使い方2語の形が似ているので言いまちがえる

  • それほど多くはありませんが、語のカタチが似ていることで取り違える。これも「マラプロピズム」に含まれます
  • 使い方3わざと言いまちがえる

  • 人を楽しませたり、笑わせたりする。そういった、積極的に「言いまちがい」をするばあいも、「マラプロピズム」にあたります。
  • 例文を見る)
  • 引用は『七人のナナ』1巻から。

    期末試験。日本史のテストを受けている、ナナたち。[

    しかし、テストを監督しているはずの「生活指導」が(たぶんヒマで)眠ってしまった。それをいいことに、テストの答えを、ナナがクラス中に聞こえる声で言う。いわく、
    • ナナ「えっおォ
    • 日本にキリスト教を
    • 伝えたのは…
    • サンフランシスコ=ザビエル
    • カンターン」
    とのこと。
    ナナが大声で言っているこの答え、間違っています。

    念のため書いておくと、正しい答えは、
    フランシスコ=ザビエル
    です。決して、
    サンフランシスコ=ザビエル
    ではありません。

    「誤用語法」といえるのは、「フランシスコ=ザビエル」ではなく「サンフランシスコ=ザビエル」と言っているところ。この部分を「誤用語法」としておきます。これは、「書き手や話し手が混同して、【本当に】言い間違いをする場合」の方に当てはまるでしょう。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • マラプロピズム
  • 呼び方2
  • 誤用語法
  • 参考資料
  • ●『シェイクスピアのことば遊び』(梅田倍男/英宝社)
  • シェイクスピアの作品に出てくる「マラプロピズム」について、かなりくわしく書いてあります。これだけの分量をそなえている本は、ほかには見当たりません。
  • 余談

  • 余談1「ザビエル」について——その1
  • 「ザビエル」について勉強をしておくと、次のようになります。
    「ザビエル」こと、本名「フランシスコ=ザビエル」は、スペイン出身。イエズス会に入り、東方にキリスト教を伝道する。途中にインド、次いでマラッカでキリスト教を伝道したあと、1549年に鹿児島に到着。領主の島津貴久の許可を得て布教。のちに山口で領主の大内義隆、豊後では領主の大友義鎮の許可を得て布教を行う。しかし、日本の文化にキリスト教を広げるためには、まず中国でキリスト教を広めなければならないと考え、中国に入ろうとする。しかし広州の付近で1552年に病没。

    と、『日本史B用語集』(全国歴史教育研究協議会[編]/山川出版社)を参考に書いてみました。

    わが家には、こんな大学受験の参考書まで保存してある。ほかに『世界史B用語集』や『倫理用語集』とかも、今でも持っている。わりと便利ですよ。こういう知らなくてもいいようなことを書く時には。

  • 余談2「ザビエル」について——その2
  • これより下では、さらに無駄な知識をあなたに。

    サンフランシスコ=ザビエル」は正しい
    のです。「フランシスコ=ザビエル」でなくて、「サンフランシスコザビエル」でも、正解なのです。

    なぜかというと、以下に書くようなことが言えるからです。
    • まず、ザビエルの出身はスペインなので、ザビエルの本名をスペイン語(英語?フランス語?)にしてみる。
    • すると[Francisco de Xavier]となる。
    •   ↓
    • でもザビエルは、キリスト教を東方に伝道した偉い人。
    • なので、「聖」という意味で「St.」という称号が付くことがある。
    • これは、「Luke(ルカ)」を「St. Luke(聖ルカ)」と言ったり、
    • もしくは「John(ヨハネ)」を「St. John(聖ヨハネ)」とか言うのと同じです。
    • で、「ザビエル」のばあいには、[St. Francisco
    • de Xavier]と呼ぶことになる。
    •   ↓
    • この[St. Francisco de Xavier]をカタカナ読みに直してみると…。
    •   ↓
    • あら不思議、「サンフランシスコ=ザビエル」になってしまいました(「St.」は「サン」とも読みます)。
    •   ↓
    • だから、「聖フランシスコ=ザビエル」「サンフランシスコ=ザビエル」「フランシスコ=ザビエル」は、
    • みんな同一人物。
    • したがって、どれを書いても正解となる。
    というわけです。だから正確に言うと、「ナナ」の解答は[○正解]となるのです。ですが、クラス一同が「違————う」と言っている。だから、いちおう「マラプロピズム(誤用語法)」に分類しておきます。

    まあ、さすがに
    「本人は正解と思っているが、周囲は間違っていると思っていたけれど、本当は本人の言っていることが正しい」
    という、意味不明なレトリック用語までは用意されていないみたいですし。