伏線:あとのほうでおこる出来事のマエフリをおく
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伏線 ふくせん preliminary

『生徒会の一存』[上]2巻53ページ・[下]4巻41・42ページ([原作]葵せきな・[作画]10mo/富士見書房 DRAGONCOMICS AGE)
  • 【(上)——episode 8】
  • 鍵「ん――俺
  • 中学の頃も帰宅部
  • でしたからねぇ」
  • 真冬「なんか意外です
  • 凄く活動的な印象
  • あるのに……」
  • 鍵「あ――いや
  • 中学の頃は単に
  • 義妹(いもうと)がね……
  • 真冬「義妹(いもうと)さんが?」
  • 鍵「いや
  • なんでもない
  • 真冬「今 さらっと
  • 気になる伏線
  • 立てられた気がしましたが
  • とりあえずいいです」
  • 【(下)——episode.20】
  • 鍵「ある時 俺は幼馴染みの
  • 飛鳥から告白されたんだ
  • 俺も彼女の事好きだったら
  • 当然のように付き合う
  • ことになった」
  • 「だけど 妹はそれが
  • 許せなくて
  • ちょっと事件が起きて
  • しまったんだよ」
  • くりむ「事件?」
  • 鍵「詳しい話は
  • 勘弁してください」
  • 「とにかく色々ありまして
  • 妹は精神的に不安定に
  • なってしまいまして……」
  • 「入院生活を
  • 余儀なくされるほどに ね」
  • 妹もすごく
  • 大事だったから……
  • それから俺は
  • 林檎に付きっきりの
  • 看病生活を
  • するようになった
  • ――以下続くけれど省略
-『生徒会の一存』[上]2巻53ページ・[下]4巻41・42ページ([原作]葵せきな・[作画]10mo/富士見書房 DRAGONCOMICS AGE)
  • 定義重要度2
  • 伏線は、あとのほうでおこる出来事のマエフリをおくレトリックです。うしろにつづく話の展開を補強することになるような情報を、前のほうであらかじめ用意しておいておくことになります。

  • 効果

  • 効果1「伏線」がどのように働くか考えることで、謎解きの気分を味わう

  • 受け手(聞き手・読み手)としては、思いがけないできごとが「伏線」だったと気がつくことになります。そしてそのことで、〈謎解きの快感〉を味わうことができます。これは、とくに推理小説では重要なポイントになります。
  • キーワード:謎解き、謎、問い、関心、興味、求知心

  • 効果2ストーリーを盛り上げて、ラストシーンで最高潮に達するようにする

  • 話を盛り上げるためには、非常に重要な手段となります。「伏線」を張らないでストーリーを進めると、ストーリーの最後で感じる〈謎解きの快感〉を味わうことができなくなってしまうのです。
  • キーワード:盛り上げる、盛り上がる、高まる、高める

  • 効果3ほのかにではあるが、確実に印象づけることが必要

  • 「伏線」だと気がつかれては、失敗。さいごまで「伏線」だと思われなかったら、これも唐突になってしまうので失敗。ですので、ほのかに印象づけるくらいが、いちばん適しています。受け手(聞き手・読み手)が記憶の中に留めている程度の「伏線」が、望ましいといえます。
  • キーワード:唐突、急に、出し抜け、突然、突如、不意、不意打ち、ほのか、ほんのり、ぼんやり、淡い、模糊、もうろう、不鮮明、かすか、うすうす

  • 効果4最後まで読んだ本を、また読み返すくらいの気分にさせる

  • 最後まで読んだ本を、また読み返す。すると、「ここが「伏線」だったのか」と気づくような「伏線」。このような時に、いちばん「伏線」が「伏線」として働きます。
  • 使い方
  • 使い方1あとから出てくる情報を補強するできごと、それとなくばらまいておく

  • あとから来るエピソードの布石になるような情報を、それとなくばらまいておく。すると、あとから起こるできごとを、正当化するような補強する材料になわけです。ただしあくまで、「それとなく」出されたものでなければなりません。
  • キーワード:布石、用意、準備、手配り、手回し、手当て、補強、増強、それとなく、暗に、こっそり、こそこそ、そっと、さりげなく、なにげない、自然、おのずから、おのずと、何となく、まにまに、暗示、ほのめかす、におわせる、示唆、黙示、前ぶれ、きざし、知らせ、告げる、ぼかす、ぼやかす
  • 注意

  • 注意1受け手が、すぐ気がつくようなものであっはならない

  • あたりまえのことですが、「伏線」となるエピソードが「伏線」であると受け手(聞き手・読み手)が気づかれたら失敗です。これを避けるためには、巧妙な「伏線」を張らなければなりません。
  • キーワード:巧妙、上手、うまい、器用

  • 注意2「伏線」となる部分で、リズムを壊してはならない

  • 「伏線」を張るために、あまりに細々としたエピソードをつくる。それは、受け手(聞き手・読み手)に「伏線」だと気がつかれなくても、長ったらしく、またリズムを壊すようなものになってしまいます。ですので「伏線」は、失敗する危険が大きいのも事実です。したがって「伏線」はふつう、短いパラグラフで行われます。
  • キーワード:長ったらしい、長々と、長い、ロング、くだくだしい、くどくどしい、持って回った、回りくどい、遠回し、くだくだしい、くだくだ、たらたら、冗長、冗漫

  • 注意3あまりに複雑な「伏線」をはってはいけない

  • 「伏線」が、いくつも張られる。すると、受け手(聞き手・読み手)としては、そのうちでどの筋がメインなのかが分からなくなってしまいます。ですので「伏線」は、あまり多くしてはいけません。
  • キーワード:複雑、繁雑、煩雑、わずらわしい、煩瑣、ややこしい、面倒、手数、手がこむ、あざとい、小利口

  • 注意4「伏線」には必ず、それと結びつく結果が求められる

  • 「伏線」に対応する「結末」がない。または、ある「結末」に呼応する「伏線」がない。そんな中途半端な作品は、許されません。
  • キーワード:対応、相照らす、対照、対置、対峙、応じる、呼応、照応
  • 例文を見る)
  • 例文は『生徒会の一存』。引用したイラストのうち、上の部分が2巻。下の部分が4巻からのものです。

    このサイトで、この例を引用した理由。それは、
    伏線を立てられた
    と、登場キャラクター(真冬)自身が話しているからです。明らかに「
    伏線を立てられた」
    と書かれているのだから、伏線に違いない。であれば、この例を使うのが安全策といえるでしょう。

    引用した部分を、くわしく見てみることにしましょう。

    まず、引用した前半の部分(episode 8)では、
    • 中学の頃は単に
    • 義妹(いもうと)がね……
    と、鍵は義妹(いもうと)のことを言いかける。しかし、
    • いや
    • なんでもない
    なんて言って、ことばを濁す。濁したことによって、棚上げの状態になってしまうわけです。

    そして、中断して棚上げになったことが、後で明らかになる。それが、後半の部分(episode.20)というわけです。

    つまり、
    • 看病生活を
    • するようになった
    というのが、「伏線」を使うことによって隠されていた事実だというわけです。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「伏線」と「反照法」「照応法」との関係
  • 反照法」や「 照応法」などと同じように、作品全体の配列に影響を与えるレトリックの一つです。また、「情報待機」などを伴うこともあります。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 伏線
  • 参考資料
  • ●『シナリオ作法四十八章』(舟橋和郎/映人社)
  • 映画脚本のハウツー本です。映画の脚本でも「伏線」は重要なものになります。なので、かなりくわしい解説が書かれています。
  • ●『プロの小説家になる作家養成塾』(若桜木虔/KKベストセラーズ)
  • こちらは、小説作家のハウツー本です。小説を書くときには、もちろん「伏線」が重要になります。
  • 余談

  • 余談1「言いかけてやめる」というレトリック技法
  • 鍵は、
    • 中学の頃は単に
    • 義妹(いもうと)がね……
    と、鍵は義妹(いもうと)のことを言いかける。しかし、
    • いや
    • なんでもない
    なんて言って、ことばを濁します。つまり、言いかけたままなのです。

    こういったものは、「 中断法」といいます。