伏線:あとのほうでおこる出来事のマエフリをおく
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伏線
関連レトリック
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ふくせん
preliminary
【(上)——episode 8】
鍵「ん――俺
中学の頃も帰宅部
でしたからねぇ」
真冬「なんか意外です
凄く活動的な印象
あるのに……」
鍵「あ――いや
中学の頃は単に
義妹(いもうと)がね……
真冬「義妹(いもうと)さんが?」
鍵「
いや
なんでもない
」
真冬「今 さらっと
気になる
伏線
を
立てられた気がしましたが
とりあえずいいです」
【(下)——episode.20】
鍵「ある時 俺は幼馴染みの
飛鳥から告白されたんだ
俺も彼女の事好きだったら
当然のように付き合う
ことになった」
「だけど 妹はそれが
許せなくて
ちょっと事件が起きて
しまったんだよ」
くりむ「事件?」
鍵「詳しい話は
勘弁してください」
「とにかく色々ありまして
妹は精神的に不安定に
なってしまいまして……」
「入院生活を
余儀なくされるほどに ね」
妹もすごく
大事だったから……
それから俺は
林檎に付きっきりの
看病生活を
するようになった
」
――以下続くけれど省略
-『生徒会の一存』[上]2巻53ページ・[下]4巻41・42ページ([原作]葵せきな・[作画]10mo/富士見書房 DRAGONCOMICS AGE)
伏線
は、あとのほうでおこる出来事のマエフリをおくレトリックです。うしろにつづく話の展開を補強することになるような情報を、前のほうであらかじめ用意しておいておくことになります。
「伏線」がどのように働くか考えることで、謎解きの気分を味わう
受け手(聞き手・読み手)としては、思いがけないできごとが「伏線」だったと気がつくことになります。そしてそのことで、〈謎解きの快感〉を味わうことができます。これは、とくに推理小説では重要なポイントになります。
:謎解き、謎、問い、関心、興味、求知心
ストーリーを盛り上げて、ラストシーンで最高潮に達するようにする
話を盛り上げるためには、非常に重要な手段となります。「伏線」を張らないでストーリーを進めると、ストーリーの最後で感じる〈謎解きの快感〉を味わうことができなくなってしまうのです。
:盛り上げる、盛り上がる、高まる、高める
ほのかにではあるが、確実に印象づけることが必要
「伏線」だと気がつかれては、失敗。さいごまで「伏線」だと思われなかったら、これも唐突になってしまうので失敗。ですので、ほのかに印象づけるくらいが、いちばん適しています。受け手(聞き手・読み手)が記憶の中に留めている程度の「伏線」が、望ましいといえます。
:唐突、急に、出し抜け、突然、突如、不意、不意打ち、ほのか、ほんのり、ぼんやり、淡い、模糊、もうろう、不鮮明、かすか、うすうす
最後まで読んだ本を、また読み返すくらいの気分にさせる
最後まで読んだ本を、また読み返す。すると、「ここが「伏線」だったのか」と気づくような「伏線」。このような時に、いちばん「伏線」が「伏線」として働きます。
あとから出てくる情報を補強するできごと、それとなくばらまいておく
あとから来るエピソードの布石になるような情報を、それとなくばらまいておく。すると、あとから起こるできごとを、正当化するような補強する材料になわけです。ただしあくまで、「それとなく」出されたものでなければなりません。
:布石、用意、準備、手配り、手回し、手当て、補強、増強、それとなく、暗に、こっそり、こそこそ、そっと、さりげなく、なにげない、自然、おのずから、おのずと、何となく、まにまに、暗示、ほのめかす、におわせる、示唆、黙示、前ぶれ、きざし、知らせ、告げる、ぼかす、ぼやかす
受け手が、すぐ気がつくようなものであっはならない
あたりまえのことですが、「伏線」となるエピソードが「伏線」であると受け手(聞き手・読み手)が気づかれたら失敗です。これを避けるためには、巧妙な「伏線」を張らなければなりません。
:巧妙、上手、うまい、器用
「伏線」となる部分で、リズムを壊してはならない
「伏線」を張るために、あまりに細々としたエピソードをつくる。それは、受け手(聞き手・読み手)に「伏線」だと気がつかれなくても、長ったらしく、またリズムを壊すようなものになってしまいます。ですので「伏線」は、失敗する危険が大きいのも事実です。したがって「伏線」はふつう、短いパラグラフで行われます。
:長ったらしい、長々と、長い、ロング、くだくだしい、くどくどしい、持って回った、回りくどい、遠回し、くだくだしい、くだくだ、たらたら、冗長、冗漫
あまりに複雑な「伏線」をはってはいけない
「伏線」が、いくつも張られる。すると、受け手(聞き手・読み手)としては、そのうちでどの筋がメインなのかが分からなくなってしまいます。ですので「伏線」は、あまり多くしてはいけません。
:複雑、繁雑、煩雑、わずらわしい、煩瑣、ややこしい、面倒、手数、手がこむ、あざとい、小利口
「伏線」には必ず、それと結びつく結果が求められる
「伏線」に対応する「結末」がない。または、ある「結末」に呼応する「伏線」がない。そんな中途半端な作品は、許されません。
:対応、相照らす、対照、対置、対峙、応じる、呼応、照応
例文は『生徒会の一存』。引用したイラストのうち、上の部分が2巻。下の部分が4巻からのものです。
このサイトで、この例を引用した理由。それは、
伏線
を立てられた
と、登場キャラクター(真冬)自身が話しているからです。明らかに「
伏線
を立てられた」
と書かれているのだから、伏線に違いない。であれば、この例を使うのが安全策といえるでしょう。
引用した部分を、くわしく見てみることにしましょう。
まず、引用した前半の部分(episode 8)では、
中学の頃は単に
義妹(いもうと)がね……
と、鍵は義妹(いもうと)のことを言いかける。しかし、
いや
なんでもない
なんて言って、ことばを濁す。濁したことによって、棚上げの状態になってしまうわけです。
そして、中断して棚上げになったことが、後で明らかになる。それが、後半の部分(episode.20)というわけです。
つまり、
看病生活を
するようになった
というのが、「伏線」を使うことによって隠されていた事実だというわけです。
「伏線」と「反照法」「照応法」との関係
「
反照法
」や「
照応法
」などと同じように、作品全体の配列に影響を与えるレトリックの一つです。また、「情報待機」などを伴うこともあります。
伏線
『シナリオ作法四十八章』(舟橋和郎/映人社)
映画脚本のハウツー本です。映画の脚本でも「伏線」は重要なものになります。なので、かなりくわしい解説が書かれています。
『プロの小説家になる作家養成塾』(若桜木虔/KKベストセラーズ)
こちらは、小説作家のハウツー本です。小説を書くときには、もちろん「伏線」が重要になります。
「言いかけてやめる」というレトリック技法
鍵は、
中学の頃は単に
義妹(いもうと)がね……
と、鍵は義妹(いもうと)のことを言いかける。しかし、
いや
なんでもない
なんて言って、ことばを濁します。つまり、言いかけたままなのです。
こういったものは、「
中断法
」といいます。
関連するページ
照応法
:間をおいて同じフレーズをくり返す
反照法
:話の最初と最後で同じフレーズを使う
そのた
●ストーリーの進め方に関するもの
:
情報待機
-
懸延法
-
誤解誘導
-
中断法
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