通過論法:関係ない話題へ急に変化させようとする
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通過論法 つうかろうぽう apoplanesis、metastasis

『さくら荘のペットな彼女』1巻65~66ページ([原作]鴨志田一・[作画]草野ほうき・[キャラクターデザイン]溝口ケージ(アスキー・メディアワークス 電撃コミックス)
  • 空太「椎名って どういう人生を
  • 送ってきたんだよ?
  • ましろ「絵を描いてきた
  • 空太「他には?」
  • ましろ「絵を描いてきたの
  • 空太「……」
  • ましろ「絵を描いてきたわ
  • 空太「 聞こえてるから
  • 他の言葉を
  • 待っていたんだよ!!」
-『さくら荘のペットな彼女』1巻65~66ページ([原作]鴨志田一・[作画]草野ほうき・[キャラクターデザイン]溝口ケージ(アスキー・メディアワークス 電撃コミックス)
  • 定義重要度1
  • 通過論法は、いままでの話題とは関係のない話題へと、急に変化させようとするものです。

  • 効果

  • 効果1それまでとはちがった話題にすることで、それまでの話題をゴマかす

  • 多くのばあい「通過論法」は、それまでの話題が続くのが不都合なときに使われます。そして「通過論法」が成功するには、それまでの話題を変えることに「もっともらしさ」が求められます。たしかに、「通過論法」によって避けられることになる「もとの話題」とは、まったく違う。ですがそれでいて、「もとの話題」から外れてはいないという印象をあたえる。このあたりが、「通過論法」の成功のカギなります。
  • キーワード:回避、逸脱、脱線、逃れる、逃げる、避ける、はぐらかす、ごまかす、まやかし、くらます、惑わす、(注意を)それる、そらす、はずれる、とばす

  • 効果2それまでの話題で論点だったものを取りかえる、論点をぼかす

  • それまでにピントをあわせていた話題があった。けれども「通過論法」によって、それまで論点であったものからは、ピントが外れます。そして、新しい話題についてピントをあわせていくことになります。このことから、もともとの話題についての重要度を、低くするができます。
  • キーワード:(論点を)ぼかす、ぼやかす、無視、軽んじる、軽視、黙殺、取りあわない

  • 効果3それまでの話題が、これ以上続くことを避ける

  • 「通過論法」というのは、それまでの話題を強制的に変えることです。なので「通過論法」は、それまでの話題が続くのを、さえぎることになります。
  • キーワード:拒否、封じる、制止、禁止
  • 使い方
  • 使い方1関係のない話題を、いままでの話題と入れかえる

  • これが「通過論法」の、基本的な使い方になります。つまり、それまでの話題をほかの話題へと切りかえるときに使われます。
  • キーワード:変える、変化、変動、急変、豹変、一変、一転、変更、変換、換える、取りかえる、入れかえる、置きかえる、乗りかえる、切りかえる、転換、移行、移す、置きかえる、移動、転移、移行
  • 使い方2以前の話題よりも新しい話題のほうに、強く気持ちを向かわせる

  • いままでの話題ではなく、ほかの新しい話題にほうへと逆転させるのが「通過論法」です。そしてこのばあいには、たしかに、あからさまに話題を変えることもあります。けれども、それとなく内容を移しかえるほうが効果があります。
  • キーワード:逆用、逆転、逆手、他へ向ける、他、外
  • 使い方3考えもしなかった方向に、話の流れを変える

  • 「通過論法」では、それまで考えもしなかったような向きに、話題を転じます。言葉のやり取りというのは、おたがいの話が「かみ合っている」のが原則です。この原則を破るのが「通過論法」だといえます。
  • キーワード:思いがけない、思いもよらない、図らずも、意外、意想外、予想外、意表、不意に
  • 例文を見る)
  • 引用は、『さくら荘のペットな彼女』1巻からです。

    ここは、高校の寮「さくら荘」。主人公の空太(そらた)は、この寮で暮らしている。

    ある日、この「さくら荘」に、新たな住民がやってくる。名前は、椎名ましろ。美術科に編入してきた。ましろは、現代デザインアートの有名人だという。そして、その名声にたがわぬ実力をもっている。

    が、ましろには重大な問題点があった。それは、「絵を描くこと」以外のことは何もできないということ。具体的には、ひとりで着がえることができない。自分の下着を自分で選ぶことができない。水道の蛇口の閉めかたを、知らない。コンビニの棚にある食品を、レジを通すまえに商品を食べはじめる。などなど。

    空太がそのことを問いつめたのが、引用のシーン。

    いま空太が話題としているのは、「どのように人生を送れば、ましろのような人になるのか?」ということ。

    それに対して、ましろ。「絵を描いてきた」とのこと。このあたりが「転送論法」となります。ましろが意識的に「転送論法」やっているのではないとは思う。でも、「ましろの人生うんぬん」が話題になるのを避けて、「絵を描いてきた」と何度もくり返している。これは実質的に「転送論法」といえます。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 通過論法
  • 呼び方3
  • 脱線・脱線陳述
  • 参考資料
  • ●『レトリック事典』(佐藤信夫[企画・構成]、佐々木健一[監修]、佐藤信夫・佐々木健一・松尾大[執筆]/大修館書店)
  • たぶん日本語の文献では、この本が一番くわしく書いてあります。2ページだけど。
  • ●『大修館英語学事典』(松浪有・池上嘉彦・今井邦彦[編] /大修館)
  • (私が知る限り)、上記の事典のたぐいで日本語の文献で「apoplanesis(脱線陳述=通過論法)」を載せているのは、残念ながら、この本だけでした。1行くらいの解説だけど。
  • ●〈レトリックを解説している英語サイト〉
  • というように、解説に困ったときには。インターネットを使うことで、問題を解決することがあります。便利なことに、英語で書かれたサイトでも瞬時に手に入れることができます。私は学生時代、英語が(かなり)苦手だったので、皆さまに見せるような翻訳ではありません。ですが、5~6か所の英語サイトを、ページ作成の参考にしました。
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