方便法は:わざと醜い言葉を配置する表現法
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『クソババァに花束を!!』
-『クソババァに花束を!!』1巻表紙
方便法
は、ある言葉が「きれい」であることを際立たせるため、近くに「きたない」言葉を用いるというレトリックです。つまり、ある対象が美しいことを強調するために、その近くにことさら醜い言葉を配置する表現法です。
主要な部分を際だたせる
あるコトバが、キレイであることを際だたせる。そのために、近くに醜かったり悪かったりするイメージをもつコトバを置く。このことで、さらにキレイであることを強く印象づけることができます。
:際だつ、目立つ、引き立つ、水際立つ、映える
あえて醜いものを対比的に取りこむ
その表現で伝えようとする対象の美しさを目立たせるために、意図的に醜いものを対比的に取り込む表現ということになります。
引用は『クソババァに花束を!!』1巻の表紙です。
見てのとおり、「花束」の美しさを際立たせるために、わざと「クソババァ」という汚い言葉を配置しています。ですので、「方便法」と言うことができます。
『アルジャーノンに花束を』(ダニエルキイス)みたいな言葉ならば、「方便法」にはなりません。上で引用したのは「クソババァに」という侮辱的な言葉がついているから、「方便法」といえるのです。
いちおう、この本の紹介をしておきましょう。
主人公は「胡絽」という女の人(23歳)。彼女は赤ちゃんの時に、養護施設に捨てられた。けれども、現在の養父母に引き取られ、不自由のない生活を送っていた。
そこに。
実の母親である「エリナ」が登場。いままで養父母たちと暮らしていた家に、住むことになる。
だが、この実の母親「エリナ」がくせ者。
「やれやれ なんてちっこい家だろうねぇ〜〜」(22ページ)
「ふんっ サラリー もらうほうかい
そんなんで ちゃんと あたしの 面倒みれるのかい?」(23ページ)
などなど、まさに、自分がこの家の主であるかのような言い方。「悪口雑言罵詈讒謗」の嵐です。「胡絽」には影で「クソババァ」と言われるようになる始末になります。
だが。
この「クソババァ」こと「エリナ」が、転んで鎖骨を骨折する。
そこから事態が変わってくるのですが、その先が気になる人は、本を買って読んでみて下さい。
「方便法」は、マイナーなレトリック用語
この「方便法」というレトリック用語は、あまり見かけません。
『新文章講話』(五十嵐力/早稲田大学出版部)と、それを土台としている『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)、『日本語レトリックの体系』(中村明/岩波書店)の3冊でしか(今のところ)見かけないレトリックです。
ですが、『日本語の文体・レトリック辞典』を基本文献としているこのサイトでは、レトリックの1つとして項目を立てておきます。
この3冊は、口をそろえたように、
行水の捨てどころなき虫の声 上島鬼貫
を例文として引用しています。この俳句では、「虫の声」の美しさを強調するために、わざと「行水」という汚い言葉を配置していると説明できます。
「方便法」と「対照法」との関係
この「方便法」などの、コントラストをつくるレトリックは、「
対照法・対句
」にまとめてあります。そちらもご参照ください。
方便法
同一思想反復・多面みがき
労作法
『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)
「方便法」について記載がある、数少ない本の1つ。
関連するページ
対照法・対句
:コントラストをつくるレトリックのまとめ
そのた
●対比によって文を作るレトリック
:
倒置反復法
-
交差配語法
-
同形節反復
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対偶法・対置法
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