語尾音消失:ことばの最後にある部分を省略する
TOPページ語尾音消失
関連レトリック語尾音消失

語尾音消失 ごびおんしょうしつ apocope

『ヘイビィ★LOVE』2巻157ページ(椎名あゆみ/集英社 りぼんマスコットコミックス)
  • せあら「将来プロになろーって
  • 人をぬけるワケないじゃん!」
  • (ぷんっ)
  • 柊平「俺 プロになるつもりないよ
  • 俺は雷みたいに
  • 将来これで食っていける
  • ようになりたいなんて 思ってないよ
  • なりたいものは 別にある」
  • せあら「そうだったの!?
  • 全然知らなかったなあ
  • てっきり柊ちゃんは
  • バスケ選手になるもの
  • だとばかり… なりたいものって何?」
  • 柊平「おまえも 教えるか?」
  • せあら「え?」
-『ヘイビィ★LOVE』2巻157ページ(椎名あゆみ/集英社 りぼんマスコットコミックス)
  • 定義重要度3
  • 語尾音消失は、ことばの最後にある部分を省略するレトリックです。つまり、語句の末尾に来るべき音を、はぶいてなくすものです。

  • 効果

  • 効果1音の数を減らして、より使いやすくする

  • 一般に「語尾音消失」を用いるのは、それによって言葉の「音」の数を減らし、より使いやすくするためだと言えます。
  • キーワード:便利、有用、有益、便益、使いやすい

  • 効果2詩を作るときに、韻律を踏むため

  • とくに西洋では、「語尾音消失」は詩を作るときに使われます。詩を作るときには、韻律を踏みます。そのときに「語尾音消失」をさせることによって、単語の最後を切り取る。そのことで、押韻をすることができることになります。
  • キーワード:詩、詩歌、韻律、調子、語調、音調、リズム

  • 効果3話しことばで使われている

  • この「語尾音消失」は、話しことばでよく見られます。これは、書きことばよりも話しことばのほうが、ことばを使うときに自由度が高いからです。
  • キーワード:話しことば、口語、自由、自由自在、自在、思いのまま、臨機応変、柔軟
  • 例文を見る)
  • 引用は、『ベイビィ★LOVE』2巻から。

    主人公は有須川せあら。

    せあらは子どもの頃、瀬戸柊平という男の子に一目惚れをする。が、「チビスケ」と一蹴されてしまう。
    しかし柊平に対するその恋の気持ちは、小学6年生になったいまでも持ち続けている。

    そこで「せあら」は、柊平の一家に同居するというスゴい技を使う。この同居生活の中で、柊平に好きになってもらおうと一生懸命になる。

    しかし、柊平はニブい。柊平が中学3年生で、「せあら」が小学6年生だということもあるけど、「せあら」の恋心には全く気が付かない。柊平は雷という友だちに、こんな風に思われてしまう。
    柊平「あれ でも せあらに
    好きな奴がいるのは
    確かだぜ じゃあ一体
    誰のことだ」
    雷(おまえだよ おまえ!
    2か月以上一緒に
    暮らしてて なんで
    わかんねーんだよ
    このドンカン! あほんだら)
    (174-177ページ)

    そんなある日の夕方。「せあら」が公園にいると、柊平がやってくる。そして、せあらと柊平の2人で、バスケットボールをはじめる。そこでの会話に「語尾音消失」を見つけました。
    2回出てくるプロという言葉
    それと、バスケという言葉

    が、その「語尾音消失」です。

    「プロ」のほうは、正式名称は「プロフェッショナル」。なので、「フェッショナル」がなくなっていることから「語尾音消失」と言えます。これは日本で使われるだけでなく、英語でも"pro"で通用するみたいです。

    また「バスケ」のほうは、正式名称は「バスケット・ボール」。なので、「ット・ボール」がなくなっていることから「語尾音消失」と言えます。こっちは和製英語なので、英語を話す人には通じません。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「語尾音消失」の具体例
  • 上にで書いた例のほかには、こんなものがあげられます。
    「テレビジョン」の「ジョン」が消えて「テレビ」だけになったりするのが、この例にあたります。このように、「語尾音消失」をしたもの(この場合なら「テレビ」)のほうが、もはや一般に使われる形になっているものもあります。

  • 深く知る2「短縮語」のグループ
  • 「語尾音消失」は、「 短縮語」にふくまれるレトリックです。「 短縮語」」にふくまれるものとしては、ほかに、
    言葉の最初の部分を省略するのは「 語頭音消失」(「アルバイト」が「バイト」になったりする場合)。

    言葉の中間の部分を省略するのは「 語中音消失」(「キモチわるい」が「キモい」になったりする場合)。

    があります。そちらもご参照ください。

    このように、「 短縮語」には「 語頭音消失」「 語中音消失」「語尾音消失」の3つがあります。ですがその中で、一番よく使われるのは「語尾音消失」です。

    なぜかというと、言葉はその最初の部分に、その言葉全体を連想させるような情報を多く持っているからです。

  • 深く知る3「国の名前で使われる「語尾音消失」
  • そういえば「国の名前」も、「語尾音消失」の宝庫です。
    「独逸」は「独」に省略される(「ドイツ」です)。
    「露西亜」は「露」に省略される(「ロシア」です)。
    「仏蘭西」は「仏」に省略される(「フランス」です)。
    「英吉利」は「英」に省略される(「イギリス」です)。

    といったぐあいに、その国の人たちを無視して勝手に省略してしまいます。

  • 深く知る4「語尾音消失」の長さ
  • ふつうことばが省略されると、2音節から4音節くらいの長さにまとまります。ここでいう「音節」というのは、「ひらがな」「カタカナ」にしたばあいの文字の数と同じようなものだと考えてください(-厳密には違うけど)。

    ですので、「2音節から4音節くらいの長さにまとまる」といったばあい。おおざっぱにいえば、「省略することによって作られたことばを「ひらがな」「カタカナ」で数えると、2つ?4つくらいになる」という意味になります。

    それはなぜかというと。
    省略したのにもかかわらず、まだこれ以上長いことばだとしたら。それでは省略した意味が、ほとんどなくなってしまいます。つまり「長すぎると、使いづらいまま」なのです。

    だけど、もしもこれ以上短く省略してしまったとしたら。もはや何を言いたいのかが、分からなくなってしまいます。ようするに、「短すぎると、ことばとして伝わらない」のです。

    だから、ふつう省略した言葉は2音節から4音節にまとまります。それはつまり、誤解をおそれずに書けば「ひらがな・カタカナの2文字から4文字に落ち着く」といったようなことです。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 語尾音消失
  • 呼び方4
  • 語尾音脱落・語尾音省略
  • 呼び方1
  • 語尾音除去・後約・下略
  • 参考資料
  • ●『ありえない日本語(ちくま新書 524)』(秋月高太郎/筑摩書房)
  • 「なにげない」が「なにげに」にかわった理由。その考察が、書かれています。厳密にいえば「なにげに」は「語末音消失」ではないのですが、いろいろと深みのあることがかかれています。(「なにげに」=「なにげない」?「ない」+「に」なので、たしかに「ない」は除去されている。けれども、「に」は加えられている。そのため、典型的な「語尾音消失」ではない)