異分析:単語を今までにない場所で区切り新語を造る
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異分析 いぶんせき metanalysis

『スキップ・ビート』1巻7〜8ページ(仲村佳樹/白泉社 花とゆめCOMICS)
  • キョーコ「はいっ
  • では ご注文
  • くり返させて
  • いただきます
  • Wチーズバーガー
  • フライドポテトと
  • コーラがそれぞれ
  • お一つずつ
  • テリヤキバーガー
  • フィレオフィッシュと
  • コーラが それぞれ
  • お一つずつ
  • 以上で間違い
  • ございませんね?」
  •  健気に生きる少女が
  •    ここにも 一人——
-『スキップ・ビート』1巻7〜8ページ(仲村佳樹/白泉社 花とゆめCOMICS)
  • 定義重要度2
  • 異分析は、単語を今までになかった場所で区切ることで、新しいことばを生みだすものです。

  • 効果

  • 効果1誤りのことばを生みだす「異分析」

  • 単語を今までになかった場所で区切ること。それは、ふつう間違いになるはずです。そのため、単語をそのような使い方をすれば、ふつう誤りとなります。
  • キーワード:誤る、誤り、間違える、間違う、間違い、過ち、手違い、言い誤る、言い違い

  • 効果2ことば遊びに使われる「異分析」

  • ですが「ことば遊び」には、よく「異分析」は使われます。たとえば、「なぞなぞ」「笑い話」「ジョーク」「語路合わせ」といったものに用いられます。
  • キーワード:⇒ことば遊び、なぞなぞ、ジョーク、語路合わせを参照のこと。
  • 使い方
  • 使い方1「異分析」の作りかたを順序立てて説明すると…

  • ——ここでは例として、「億ション」という単語を使ってみることにします。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「異分析」となる単語の切れ目を見つける
  • まずはじめに。「マンション(mansion)」という英語の単語があった。このmansionという単語は、ひとかたまりで途中に切れ目のないものだった。(ようするに、mansionは音節で分けることができないということ)
  • 使い方2本来は切れ目でないところを見つける

  • なのに日本語では。この「マンション」という単語のうち「マン」の部分が、金額の「万」と似ていた。
  • 使い方3単語のなかで、本来は切れ目でないところで区切る

  • そこで、このmansionという単語を、「マン」+「ション」と区切ってみた。(この場合は、たぶん不動産会社がワザと区切ったという感じがする)
  • 使い方4上の2つを合わせたものを作る

  • そのうえで「マン(万)」という部分に、同じく金額をあらわす「億」を入れかえた。(この場合は、たぶん不動産会社がワザと入れかえたという感じがする)
  • 使い方5「異分析」の完成

  • その結果。「億」+「ション」=「億ション」という単語がつくられた。(この場合は、たぶん不動[以下略])
  • 使い方6「異分析」の完成までをまとめると

  • まずはじめに、単語本来の語源からすると分けることのできない部分で切り離してしまう。つぎに、切り離してしまったパーツのうち、いくつかを入れかえる。結果。単語本来の語源からすると考えられないような単語ができます。このような結びつきをした単語を、「異分析」となります。
  • 例文を見る)
  • 引用は『スキップビート』1巻から。

    主人公は、「最上キョーコ」という女の子。

    彼女は、貧しい家の生まれ。なので、いくつものバイトをかけもちしていて、忙しい毎日。とてもじゃないけれど、普通の女の子がやっているような「おしゃれ」をする余裕なんてない。

    まあ、そういう設定となっている。けれどもそういう設定と「異分析」とは、あまり関係ない。
    「異分析」が使われている引用のシーンは、「モバーガー」の販売カウンターで仕事をしている場面。

    彼女の売っている
    Wチーズバーガー
    テリヤキバーガー
    という商品。この「Wチーズバーガー」と「テリヤキバーガー」は、「異分析」といえます。

    どちらでも構わないのですが。ここでは、「テリヤキバーガー」のほうで説明してみます。
    • まずはじめに。「ハンバーガー(hamburger)」という英語の単語があった。
      このhamburgerという単語は、hamburg+erという切れ目のあるものだった。
      ([hamburg=ハンブルグ]、[er=っぽい感じのするもの]という音節だったということ)

    • なのに。
      この「hamburger」という単語のうち「ham」の部分が、食べ物の「ham(ハム)」と似ていた。

    • そこで、このhamburgerという単語を、「ham」+「burger」と区切ってみた。
      このため「burger」が、「なにかを間にはさむ食べ物」という意味でひとり歩きをはじめた。

    • そのうえで「ham(ハム)」という部分に、同じく食べ物をあらわす「テリヤキ」に入れかえた。

    • その結果。「テリヤキ」+「バーガー」=「テリヤキバーガー」という単語がつくられた。
    こういったプロセスでもって、「テリヤキバーガー」という商品の名前がつけられています。ですので、この例は「異分析」だということができます。

    なお、この例については『新語はこうして作られる〈もっと知りたい!日本語〉』(窪薗晴夫/岩波書店)によります。

  • 深く知る2「異分析」の細かい定義
  • 「異分析」は、イェスペルセンをいう人が作り出したレトリック用語です。
    その説明は、次のとおりです。
    • 語、あるいは語群が、ある時代において、前の時代までとは異なったふうに分析されるようになっている現象に関して、もっぱら、言語の歴史的変化の説明に用いられている
    • 『グラマー・テクスト・レトリック』(安井泉[編]/くろしお出版)より抜粋
    このように「異分析」は、もともと時代の流れにしたがって起こる現象を指していました。ですが現在では、「ことば遊び」のような同じ時代で起こったものについても、「異分析」に含まれます。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 異分析
  • 参考資料
  • ●『新語はこうして作られる〈もっと知りたい!日本語〉』(窪薗晴夫/岩波書店)
  • このページで「異分析」の例としてあげたものは、すべてこの本に書かれていたものです。解説をしているページ数も多くあるので、おすすめです。