対義結合:矛盾することばを結びつけて新しい意味を生む
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対義結合 たいぎけつごう oxymoron,antilogy

『少女少年』1巻表紙(やぶうち優/小学館 てんとう虫コミックススペシャル)
『少女少年』
やぶうち優
-『少女少年』1巻表紙(やぶうち優/小学館 てんとう虫コミックススペシャル)
  • 定義重要度4
  • 対義結合は、矛盾することばを強引に結びつけて新しい意味を生みだすレトリックです。とくに、反対の意味をもつことばを結びつけるのが典型です。

  • 効果

  • 効果1ショッキングで目を引くような表現をつくる

  • 「対義結合」というレトリックがもっている、いちばんの効果。それは、とても刺激的で衝撃的な、目を引くものだということです。「対義結合」では、あえて矛盾するようなことばづかいをします。ですので、パッと見た感じでわかる強烈なインパクトをもつことになるのです。
  • キーワード:衝撃的、ショック、刺激的、興奮、エキサイト、摩擦感、衝突、目立つ、目を引く、引き立つ、映える、関心、興味、好奇、注意、心遣い、気配り、配慮、意に介する、留意、着意、気をつける

  • 効果2興味を引くようおもしろい表現をつくる

  • インパクトのあるような、目を引くような表現だということは同時に。読んでいる人・聞いている人の興味を引くような、一風変わったことばづかいになるということでもあります。
  • キーワード:おもしろい、興味津々、興味がわく、ユーモラス、おかしい、滑稽、コミカル

  • 効果3深い意味を持った、含蓄のある表現をつくる

  • 「対義結合」では、矛盾したことばづかいが使われることになります。ですので、その意味をカンタンには理解することはできません。このことから、単純ではない深い意味あいを持たせることができます。また時には、その中に一種の「真理」を含ませようとすることもできます。
  • キーワード:顕在化、深い、奥深い、深長、深奥、深淵、意味、含蓄、意義、真義、真意、深意、理念

  • 効果4意表をつくような思いがけない表現をつくる

  • >矛盾するようなことばどうしを、結びつける。そのようなことをしたら、ふつうは意味のわからない文になってしまうはずです。しかし、そのような矛盾した結びつきをしながら、それでいて意味の通ってしまう文ができてしまうということ。それは、読んでいる人・聞いている人にとっては思いがけないような予想外のものとなるはずです。
  • キーワード:意表をつく、思いがけない、思いもよらない、思いの外、端なくも、期せずして、図らずも、意外、意想外、予想外、不意を打つ

  • 効果5今までになかったような新しい考えかたを表明する

  • 矛盾したことばを、結び合わせること。それは、いままでにない新しいことばの使いかたをすることです。そしてこのような新しく作りだされたことばつかいによって、従来とは違った新鮮な考えかたや理論を表明することもできるようになります。
  • キーワード:創造、生む、生まれる、生みだす、形づくる、生成、作成、形成、作る、つくりだす、創成、生産、あたらしい、生き生き、新鮮、目新しい、新味、斬新、逆説、パラドックス

  • 効果6真理に迫ったような、ラディカルな表現をつくる

  • 新しい考えかたを表明する、という「対義結合」のチカラから一歩進んで。その「新しい考えかた」というのが、一種の「真理」を衝いたようなものとなることもあります。いいかえれば、ラディカルな表現として「真実」に迫ったような表現をしめすこともありえます。
  • キーワード:ラディカル、根本的、真理を含む表現、真理として成りたつ、実は真実を衝く、真理をのぞかせる、一片の真理を示唆する

  • 効果7謎めいた、不思議な表現をつくる

  • 矛盾したことばどうしを結びつけて。それでいて、意味が成りたっているということ。このこと自体が、ミステリアスで謎めいています。そのことから、ある種の神秘的なフレーズをつくりあげることもできます。
  • キーワード:謎めく、不思議、不可思議、神秘、ミステリー、魔術的

  • 効果8考えかたや気持ちが錯綜して、混乱している様子をあらわす

  • 考えかたであるとか気持ちとかが、ひどく混乱していて。そのために、うまく理論だったことばづかいができないばあいに。その矛盾して錯綜したココロの状態そのものを、矛盾したことばどうしの結びつきという「対義結合」であらわすこともあります。
  • キーワード:混乱、錯乱、錯綜、こみ入る、入り込む、入り乱れる、からまる、こんがらがる、もつれる、もつれこむ、ごたつく、こじれる、交錯、共存、併存

  • 効果9皮肉のためにつかう

  • これは、すべての「対義結合」にあてはまるものではありませんが。ばあいによっては「対義結合」は、皮肉というか当てこすりのようなことをあらわすこともあります。その人の動作だとかが、ちょっと見た感じだとプラスのことのようにおもえるかもしれない。でも実際には、ぎゃくにマイナスになっている。そんな「プラス」と「マイナス」とをあわせもった状態をあらわすため、矛盾したことばを組み合わせる「対義結合」が使われるということがあります。
  • キーワード:皮肉、アイロニー、当てこする、当てつける、諷する、諷刺、常識を逆なでする

  • 効果10ことわざや慣用句などとして、よく使われている

  • この「対義結合」のなかには。ことわざ・慣用句などとして、決まりきったフレーズとなっているものも多くあります。これについては、下のほうにくわしく書いてあります。
  • キーワード:成句、ことわざ、慣用句、警句、慣用表現、イディオム、格言、常套句、常套語、決まり文句、名言
  • 使い方
  • 使い方1正反対のことばを結びつける

  • まったく反対の意味を持つ2つのことばを、むりやり結びつけること。これが、もっとも基本のパターンとなります。たとえば「ありがた迷惑」のようなものが、これにあたります。ただし、結びつけることになる2つのことばは、厳密な意味で「対義語(反対語)」である必要はありません。その証拠に、厳密に考えると「ありがたい」の「対義語」が「迷惑」だというわけではないのです。
  • キーワード:排除し合う、対立関係、対義項、対義語、相対する、対峙、反対、正反対、対照的、対蹠的、対極、逆、逆さま、さかさ、裏、二律背反、反意語、反対語、反義語、強引に、わざと、ことさら、強いて、無理に、あえて、強制的、無理強い、暴力的
  • 使い方2矛盾することばを結びつける

  • 多くのばあい「対義結合」には、もうすこし多くのものを含めます。たとえば「冷たい火」という表現。これは明らかに矛盾しています。火が冷たいことは、ないからです。でも、これが「反対の意味をもつ言葉」の結びつきなのかというと、そうではありません。「冷たい」の対義語は「熱い」だとおもう。また、「火」の対義語は「よくわからない」。だけれども、「火」が必ず持っている性質に反するような、「冷たい」という修飾をすること。このような、「矛盾することばを結びつける」ものについても、ふつうは「対義結合」として扱います。
  • キーワード:両立しない、結合不可能、結びつける、相容れない、背反、矛盾した結びつき、撞着、つなぎ合わせる、継ぎ合わせる、組み合わせる、コンビネーション、連立、接合、合わせる、結合、融合、混じる、交じる、混ぜる、交ぜる、混ざる、交ざる、入りまじる、取り混ぜる、混ぜ合わせる、混合、混成、混交、混和、ミックス、ブレンド、嵌入、まとめる、くくる、一括する、統轄、統一、集約
  • 使い方3それでいて、ワケのわからない文になっていない

  • 上に書いたのいずれにしても。もしも、そのような結びつけ方を強引にしたならば。たいていは、意味のよく分からない、アタマをかしげるような文ができるはずです。しかしながら「対義結合」では、そんな無理な結びつきをしていながら、なおかつ何らかの意味を作りあげているところが特徴です。
  • キーワード:第三の意味、他の意味、別の意味、別個の意味、意味を成す、無意味に陥らない、矛盾に陥らない、有効、有益、有意義
  • 注意

  • 注意1ばあいによっては不調和による違和感を生みだす

  • 「対義結合」というのは、矛盾することばどうしを組み合わせるものです。そのため、アクの強いレトリックだといえます。ですので、文の流れに合わないような浮いてしまうことばづかいになりやすい危険も多くはらんでいます。
  • キーワード:不調和、不釣り合い、不均衡、そぐわない、アンバランス

  • 注意2奇妙な表現がつくりだされ、異様なだけになることがある

  • もちろん、一見すると奇妙に見えたとしても、そこから目を見張るような新しい考えかたが伝えられることもありえます。ですが、単に「ヘンなだけ」の言いまわしに終わってしまうこともあるので注意が必要です。
  • キーワード:奇異、ヘン、奇妙、妙、珍妙、珍奇、突飛、奇矯、異様、不自然、おかしい、けったい、へんてこりん、不気味、気味が悪い、薄気味悪い

  • 注意3思わせぶりなだけの、衒学的な表現になることがある

  • 矛盾したことばどうしを、結びつける。そして、なんだか意味が通っているような文ができる。すると、そのことに感心して、納得してしまうことがあります。ですが実のところ、その「なんだか意味が通っているような文」というのが、思わせぶりなだけで内容を伴っていないということがあります。
  • キーワード:思わせぶり、気取る、澄ます、つくろう、取りつくろう、見識張る、衒う、衒学

  • 注意4ウソを隠すための、言い逃れに使われることがある

  • 「対義結合」は、意味があるようで実は意味がないという言いまわしを作りだすことができてしまいます。そのため、「まやかし」とか「ごまかし」といったウソをつくために使われるということもありえます。
  • キーワード:虚偽、ウソ、偽り、作り事、絵空事、似非、まやかし、紛い、戯言、偽言、ざれごと、妄言、冗語、二枚舌、虚言、偽善、隠蔽、隠す、くらます、秘匿、隠し立て、隠し事
  • 例文を見る)
  • で、引用は『少女少年』1巻の表紙です。

    「少女」と「少年」との結びつきによる、「少女少年」というタイトル。まさに正反対の言葉を結びつけている例です。

    同188ページによりますと、
    よくタイトルを「少」ってまちがえられるんですけど
    「少」です! 「女のコみたいな男のコ」って意味です!
    おまちがいのないよう。
    とのこと。読者がタイトルに「おっ!?」と感じるだけではないようです。作者にとっても、思い入れの深いタイトルのようです。

    もっと話を進めていくと。
    「少女」と「少年」との対義結合。これはつまり、上でも書いているように、「少女」ということばと「少年」ということばが、正反対であって、対の関係になっているということです。

    ですが、この「対義語」だということ。それは逆説的ながら、実は「同じ軸にある」ことばなのです。
    それは「ブタに真珠」みたいなことばをみればわかります。「ブタに真珠」の「ブタ」と「真珠」。これは、まったくお門違いの関係ないことばの結びつきです。なので、「対義結合」ではありません。

    あくまで「少女」と「少年」とには、[人間で×子供で×……]という共通項がくくりだせるのです。共通項をくくりだすことができるからこそ、「女のコ」と「男のコ」という相違点が目を引く。そして、そういった相違点どうしが結合しているからこそ、そこに第三の意味が現れる。そのようにして「対義結合」が誕生するわけです。
  • 例文を見るその2)
  • 『07-GHOST(セブンゴースト)』1巻51ページ(天宮由樹・市原ゆき乃/一迅社 ZERO-SUM COMICS)
    • テイト(薄れてゆく
    • 意識の中で
    • 故郷の雪を見た

    • それは
    • 残酷なほどに
    • やさしくて


    もうひとつ、「対義結合」の例を。
    すぐ右の画像は、『07-GHOST』1巻から。

    主人公のテイトは、バルスブルグ帝国にある士官学校に在学していた。しかしある日、失っていた幼い頃の記憶を取りもどす。その記憶というのは「テイトが、バルスブルグ帝国の敵国として滅ぼされたラグス王国の、王の息子だ」というのもの。

    そんなことからテイトは、ラグスブルグ帝国の士官学校から逃げだそうとする。その結果、脱出そのものは成功したけれども、同時にキズを負ってしまい意識を失っていく。

    そんな意識を失っていく中でのシーンが、右に引用してきた部分です。

    意識の薄らいでいく中で、テイトの見たもの。それは、故郷=ラグス王国の風景だった。そして、その風景をいいあらわしたことばが「対義結合」となります。つまり、
    それは
    残酷なほどに
    優しくて
    というところです。

    この表現は、ひねくれています。ふつう「残酷」であるならば、「やさしい」ということはない。逆に「やさしい」ばあいには、「残酷」ではない。

    けれども。こんなふうに、一見すると反対に位置するようなことばを結びつけて、なおかつ意味を読みとることができるもの。こういったものが、「対義結合」となります。

    なお。
    このページの、さいしょのほうでも書きましたが。「対義結合」となるために結びつけられる2つのことばは、厳密な意味での「対義語」どうしでなくてもかまいません。ここで例としてあがっている「残酷」と「やさしい」ということばは、たしかに「どちらかと言えば反対」の意味をもつことばです。けれども、「対義語」というわけではありません。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「対義結合」を使った「慣用句」「ことわざ」など
  • この「対義結合」は、慣用句・ことわざにも使われています。

    そして。
    とくに日本語の慣用句・ことわざには、「対義結合」のものを多く見つけることができます。このページの、さいしょのほうに書いた「ありがた迷惑」というもの以外をならべてみると。「公然の秘密」「慇懃無礼」「急がば回れ」「負けるが勝ち」「損して得取れ」「タダより高いものはない」「うれしい悲鳴」「ゆっくり急ぐ」「遠くて近い」などなど。かなりの数があります。

    それに比べると。
    たとえば英語のばあい、それほど多くはありません。たしかに、make haste slowly(急がば回れ)、open secret(公然の秘密)といったあたりは有名です。ですが、それほど多いというわけではありません。

    このような違いについて。『言葉は生きている—私の言語論ノート—』(中村保男/聖文社)によると、つぎのようなことがいえるそうです。

    つまり。
    欧米人は、「白と黒」をはっきりさせないと気がすまない。つまり、「対義結合」にはあまり向いていない考えかたをするタイプ。
    それにたいして日本人は、それほど「白と黒」をはっきりさせることにこだわらない。つまり、「対義結合」を使うことに抵抗を持ちにくいタイプ。

    日本語の慣用句・ことわざには「対義結合」が多い。けれども英語の慣用句・ことわざからは「対義結合」を見つけにくい。このことから、そんなことがいえるそうです。

    なお、私(サイト作成者)の調べた限りでは。
    英語の慣用句・ことわざのなかで「対義結合」のかたちをとっているものとしては、つぎにようなものがありました。cruel kindness(残酷なやさしさ)/ harmonious discord(調和の不調和) / glorious failure(名誉ある失敗) / wise fool(賢い道化)/ sweet sorrow(甘く切ない) / living dead(生ける屍) / true lies(本当のウソ) / sound of silence(静寂の音)、といったあたりです。

    そういえば。
    「残酷なやさしさ(cruel kindness)」というのは。ちょうど【例文・その2】で、テイトが言っているフレーズそのものです。

  • 深く知る2「対義結合」に近い、「逆説」や「矛盾語法」などとの関係
  • この「対義結合」には、似かよったレトリック用語があります。それは、「逆説」と呼ばれるものです。また時として、「矛盾語法」とか呼ばれるレトリック用語が、「対義結合」とは別におかれることもあります。

    ですが、困ったことに。
    この「逆説」といったものを、どのように扱うか。もしくは「矛盾語法」というものを、どのように考えるか。これについては、理論が分かれています。

    そういったわけなので。
    細かいことなのですが、すこし説明を書いておこうと思います。とりたててレトリックに深い興味があるというわけでない方は、ばあいによっては読み飛ばしてもらってかまいません。

  • 深く知るa「単語レベル」のものを「対義結合」、「文のレベル」のものを「逆説」とするもの
  • これは、見た目だけで「対義結合」と「逆説」とを区別しようとするものです。

    つまり。
    「単語レベル」で矛盾した結びつきになっているものが、「対義結合」。それに対して、「文のレベル」で矛盾した結びつきになっているのが、「逆説」。そのように分けるわけです。

    例文をあげてみると。
    「冷たい火」というのは、「単語」レベルのものなので「対義結合」となる。これにたいして「心の貧しい人は幸いである」といったばあいには、「〜は…。」といういったふうに「文」として成りたっている。だから「対義結合」になる。こんな振りわけをします。

    この考えかたで説明している本は、多くはありません。いちおうあげておくと、
    • 『日本語修辞辞典』(野内良三/国書刊行会)
    • 『レトリック入門—修辞と論証—』(野内良三/世界思想社)
    • 『シェイクスピアのレトリック』(梅田倍男/英宝社)
    • 『遊びの百科全書——1 言語遊戯』(高橋康也[編]/日本ブリタニカ)
    などがあります。

  • 深く知るbけっきょく「対義結合」と「逆説」とは同じものだとするもの
  • けっきょく「対義結合」と「逆説」とは同じものだ、とする考えかたがあります。

    どういうことかというと。
    「対義結合」というのは、表現するためにつかわれている「ことば」どうしの意味が矛盾して結びついているもの。いいかえれば「ことばのレベル」で、合っていないもの。

    それにたいして「逆説」というのは、その表現された「内容」が「社会の常識」と矛盾しているもの。言いあらわしていることと、ふつうの考えかたとが合っていないというもの。

    だけれども。
    「ことばどうしの意味が矛盾」するようなかたちで言いあらわされるものは、けっきょく「社会の常識と矛盾」するような考えかたとなる。つまり、「ことばが自然の意味どおりに結びついていないこと」とは、「社会の常識となっているような自然なモノの見かたをしないこと」と同じだ。

    だから、けっきょくのところ。
    「対義結合」と「逆説」とは、おなじことを指ししめしていることになる。なぜなら、「対義結合」というのは「ことばどうしの矛盾した結びつき」のこと。他方で「逆説」というのは、「社会の常識と矛盾した結びつき」をしているもののこと。そして、「ことばどうしの矛盾した結びつき」と「社会の常識と矛盾した結びつき」とは、同じことなのだから。

    …とまあ、こんな考えかたのものです。
    この考えかたは、佐藤信夫先生がとっていることで知られています。たとえば、[[[dnsq
    • 『レトリック認識(講談社学術文庫 1043)』(佐藤信夫/講談社)
    • 『日本語のレトリック(講座 日本語の表現5)』(中村明[編]/筑摩書房) の中にある、佐藤信夫の執筆部分
といったところを、あげることができます。

ただし。
この考えかたは、疑問があるとしている人も多くいます。つまり、あまり受けいれている学者がいないというわけです。このへんの事情については、
  • 『レトリック事典』(佐藤信夫[企画・構成]、佐々木健一[監修]/大修館書店) ※「対義結合」と「逆説」の項目は、佐々木健一執筆
に、くわしく書かれています。
  • 深く知るc「対義結合」と「逆説」とは、まったく別のものがとするもの
  • この考えかたでは。
    「対義結合」と「逆説」とは、まったく別のカテゴリに属するレトリックだと考えることになります。

    そして、そのように考える根拠として。
    「対義結合」と「逆説」とのあいだには、1つ大きな違いがあることを指摘します。その「大きな違い」というのは、「使われていることばの意味が変化しているか」という点です。

    「対義結合」においては、ことばの意味が「変化する」。つまり、比喩となっているといえる。たとえば「冷たい火」でいえば、ことば通りの意味で「火」が「冷たい」ことはありえない。だから、なんらかの比喩として考えることになる。たとえば、「火」ということばを「ホタルの光」に見立てたものだと理解することになる(もちろん、文の流れによってどうにでも変わってくるけど)。これが、「対義結合」。

    それにたいして「逆説」においては、ことばの意味は「変化しない」。つまり、比喩となっているとはいえない。たとえば、「心の貧しい人は幸いである」で考えてみると。「心の貧しい人」というのを、なにかの比喩として考える必要がない。また「幸い」というのを、なにかの比喩と見立てることもない。ただ「心の貧しい人」なのにもかかわらず「幸い」であるという、論理的な面についてだけ矛盾がある。これが、「逆説」。

    このように。
    「対義結合」では、ことばの意味が比喩として変化している。けれども「逆説」では反対に、ことばの意味が比喩として変化していない。ここに、重大な差があると見るわけです。

    このような考えかたついて、くわしくは
    • 『レトリック探究法(シリーズ〈日本語探究法〉7)』(柳澤浩哉・中村敦雄・香西秀信[共著]/朝倉書店) (該当部分の執筆は、香西秀信)
    と、この本が指摘している
    • 『一般修辞学』(グループμ[著]、佐々木健一・樋口桂子[共訳]/大修館書店)
    を、ご覧ください。

  • 深く知るd「対義結合」と「逆説」のほかに、「矛盾語法」という用語をおくもの
  • さいごに。
    「対義結合」と「逆説」という、2つのレトリック用語のほかに。「矛盾語法」(または「撞着語法」)というレトリック用語を、ほかに設けておく考えかたもあります。

    その上で、つぎのように「対義結合」「矛盾語法」「逆説」の3つのレトリック用語を振り分けます。
    • 「対義結合」=隣りあう語(または句)レベルでの、矛盾した結びつき

    • 「矛盾語法」=もう少し広い、表現された内容レベルでの、矛盾した結びつき

    • 「逆説」=さらに広く、社会の常識と矛盾したような、それでいて真理を含んだ言いまわし
    といったかんじです。

    ただし。
    上の3つの分類は、きっちり区別するためのものではありません。つまり、「対義結合」であり、なおかつ「逆説」となる表現というのもありえます。

    たとえば。
    「急がば回れ」という言いまわし。これは「急ぐ」というのと「回る」(=遠回りする)というのが結びついている点で、「対義結合」です。しかしふつう、「急いでいるときには遠回りしないで、一直線に進む」ほうが、常識にそっているはずです。であれば、そのような常識に反しているというところにおいて「逆説」でもあります。

    これは、中村明氏が主張しているものです。くわしくは、
    • 『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)

    • 『日本語のレトリック(講座 日本語の表現5)』(中村明[編]/筑摩書房) の中にある、中村明の執筆部分
    を、ご参照下さい。

  • 深く知る3「対義結合」と「異例結合」との関係
  • この「対義結合」ほどではないけれど、ふつうでない結びつきをするものに「異例結合」というものがあります。対義語ではないけれども、ふつう結びつかない2つの言葉をダイレクトに結びつけるレトリックです。そちらに興味のある方は、「異例結合」のページを参照して下さい。

    …といっても、まだ「異例結合」のページはなかったりするのですが。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 対義結合・撞着語法
  • 呼び方3
  • オクシモロン
  • 呼び方2
  • 逆喩・撞着法
  • 呼び方1
  • 反意接続法・撞着・撞着的結合・逆装法
※場合によっては、「逆説」「逆説法」「矛盾語法」というレトリック用語が、あてられることもあります。ですが、このサイトでは別の意味で扱っている用語となります。
  • 参考資料
  • ●『レトリックの知—意味のアルケオロジーを求めて—』(瀬戸賢一/新曜社)
  • 「対義結合」にページ数を多く使っている本として、はじめにあげることができます。「対義結合」を軸として、「 成句・イディオム」・「 婉曲語法」・「 誇張法」・「 緩叙法(広義の)」に関して述べられています。ですが、この本は古いので、すでに絶版となっています。読みたいと思うかたは、古本屋や図書館を探してみて下さい。
  • ●『認識のレトリック』(瀬戸賢一/海鳴社)
  • 「対義結合」を使うことによって生じる「矛盾」が、「アイロニー」を使うときに感じることになる「矛盾」と関連性をもっていること。そのことについて書いてある本として、個人的に気にしています。〈皮肉の「しるし」〉(=「反語信号」)をあらわすひとつの手段として、「対義結合」を使うことができるのではないかとか。そういった方面で。
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