隔語句反復:あいだを置いて同じことばをくり返す
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隔語句反復 かくごくはんぷく epanalepsis

『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』1巻36ページ([原作]しめさば・[漫画]足立いまる・[キャラクター原案]ぶーた/角川コミックス・エース)
  • 吉田「金もない!住む場所もない!
  • だから男を誘惑しようって
  • のは馬鹿な考え方なんだよ」
  • 沙優「で…でも私
  • 吉田さんに何もあげられない
  • どうやって返したら…」
  • 吉田「そういうことじゃ
  • ねえんだよ沙優
  • 普通はそういう考え方には
  • ならないんだ
  • 馬鹿 大馬鹿だ
  • 物の価値もわからない
  • 甘ったれめ
  • だから
  • 俺がお前の馬鹿極まりない
  • 思考を叩き直してやる」
  • 沙優「それって… だから…」
  • 吉田「お前の甘ったれな根性が
  • マシになるまでは
  • ここに置いてやる」
-『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』1巻36ページ([原作]しめさば・[漫画]足立いまる・[キャラクター原案]ぶーた/角川コミックス・エース)
  • 定義重要度2
  • 隔語句反復は、あいだを置いて同じことばをくり返すレトリックです。つまり、共通のフレーズだとか単語が、ちりばめるように何度も反復してあらわれるというものです。

  • 効果

  • 効果1何度も使われる語に、こだわりを強調する効果を生む

  • 「隔語句反復」を使うことによる効果は、おもに「強調」です。ですがこの「隔語句反復」は、散りばめるようにくり返されるものです。このことから、コダワリが強いことや執着心があることを示すことがあります。「強調」という効果については、「隔語句反復」を含めた「反復」のグループに属しているすべてのレトリックにあてはまるものです。
  • キーワード:強調、強い、強まる、強める、強化、増強
  • 使い方
  • 使い方11語以上離れた場所に、同じ語をくりかえす

  • 1語も離さないで続けると、「 畳語」になってしまいます。あいだを間をあけて同じ語句をくり返せば「隔語句語法」となります。
  • 例文を見る)
  • 引用は、『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』1巻から。

    ある晩のこと。会社からの帰り道で、家出の女子高生と会った。

    いわく
    • 「ヤらせてあげるから
    • 泊めてよ」
    とのこと。

    吉田は、この女子高生を自分のアパートに連れ込んだ。名前は沙優だという。そして吉田は沙優に、説教を始める。

    何かよからぬ行為に及ぶわけでもなく、ただただ、沙優に叱りつけ続ける。何度も「馬鹿だ」と言いつつ。この部分が「隔語句反復」だということができます。

    そして説教を終えると最後に、「マシになるまではここに置いてやる」と言う。

    ここに、不思議な同居生活が始まることになります。
  • 例文を見るその2)
  • 『夏のあらし!』1巻51ページ(小林尽/スクウェア・エニックス ガンガンウイングコミックス)
    • あらし「一言で言うなら
    • おカネにきたない人かな」
    • はじめ(一)「 ダメじゃんなにソレ」
    • あらし「コーヒー豆の交換のときも……」
    • --あらしの回想--
    • あらし「あれ?マスター いつもの
    • お豆じゃないと 良い香りが…」
    • マスター「いーのよ!! これからは
    • 安いほーを使う!
    • どーせ バレやしないわ!」
    • 「いーかいよくお聞き!
    • 世の中カネ!! 全ての仕事は
    • おカネに通ず!!
    • 慈善事業にすら
    • おカネがからむよヨ!!」
    • --回想おわり--uli]]
      • はじめ(一)「………………ひでえ」


    「隔語句反復」というレトリックでは、あることばが何度もくり返されることになるのですが。そのことばは、「まったく同じもの」である必要はありません。

    もちろん、間をおいて「まったく同じ」ことばを反復するものは「隔語句反復」です。また、似たような意味だけれども「まったく違う」ことばのくり返しは、「隔語句反復」には当てはまりません。

    ですが。
    間をおいて「ほとんど同じカタチの」ことばを使うばあい。このようなものも、ふつうは「隔語句反復」にふくめて考えます。

    右の引用は、『夏のあらし!』1巻。

    主人公は、はじめ(一)。13歳。
    とある片田舎の喫茶店で、はじめ(一)は女のコと出会う。彼女の名前は、あらし。

    あらしは、喫茶店で働いていた。そして、その喫茶店のオーナーをやっている女性についての話になった。それが、引用した部分になります。

    マスターの女主人は、よっぽど「おカネ」に目がないらしい。そのようすを回想しているところが、「隔語句反復」になっています。

    で、見てのとおり。
    ここでは、「カネ」と「おカネ」という2とおりの言いかたがあります。ですが、「お」ということばが付いているかいないかという違いしかありません。ですので、こういった程度しかないような場合には「隔語句反復」と考えることになります。

    というか、もう少し考えていくと。
    ここでのマスターの発言。このような話の流れでは、むしろ、全く同じ単語にそろえないほうが正解だと思います。

    というのは、まず第1として。うが正解だと思います。

    というのは、まず第1として。
    「すべての仕事は おカネに通ず」

    というところ。これが、
    「すべての道は ローマに通ず」

    という「ことわざ」のパロディになっている。

    そして第2に、
    この「すべての道は ローマに通ず」という文が、
    7音+7音

    でそろっている。そういった2つのことを考えると、このように「カネ」・「おカネ」という2とおりの言いかたをしているほうが、メリットが大きいと言うことができます。

    それは、反対の見かたをすると。

    • そろっている音の数は変えてしまうと、パロディであるという感じが弱まってしまう。
    • 「おカネ」を「カネ」に言いかえてしまうと、6音になってしまうとでピッタリしない。
      (それに日本語では、7音のフレーズのほうが好まれる。)

    ということになります。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「隔語句反復」と「畳語法」との関係
  • 畳語」では、同じことばが連続してならべられます。けれども「隔語句反復」では、同じことばが間をおいて登場することになります。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 隔語句反復
  • 呼び方1
  • 間投反復・隔語反復
  • 参考資料
  • ●『現代言語学辞典』(田中春美[編集主幹]/成美堂)
  • マイナーなレトリック用語なので、「隔語句反復」についてくわしく書いてある本は見あたりませんでした。どの本にあたっても、ほとんど解説がない。しかたないので、辞典ではあるけれどもこの本をあげておきます。