平行法:同じパターンの文をくり返す
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平行法 へいこうほう parallelism

『なるたる』1巻表紙(鬼頭莫宏/講談社 アフタヌーンKC)
なるたる
  • 骸(むくろ)なる星
  • 珠(たま)たる子

鬼頭莫宏
-『なるたる』1巻表紙(鬼頭莫宏/講談社 アフタヌーンKC)
  • 定義重要度2
  • 平行法は、同じパターンの文をくり返すレトリックです。つまり、同じ形式の文を反復するものです。別の言いかたをすれば、長さが同じで構造も同じ表現をくり返すことです。

  • 効果

  • 効果1リズミカルで安定したフレーズをつくる

  • 似たパターンがくり返し登場するので、安定したリズムをつくりだします。そのようなリズム感を出すことによって、スッキリとしたくり返しにより、読み手にもリズム感を伝えることができます。そのため「平行法」は、語、音節、リズムがくり返されることに基礎をおいているものといえます。
  • キーワード:リズム、律動、律動的、スッキリ、心地よい、快感、痛快、軽快、サッパリ、語、ことば、音節、シラブル、くり返し、引き続く、重ねる、重なる、たび重なる、反復、重複、ダブル、二重、音調、調子、句読、格調

  • 効果2説得力をもつので、「成句」「警句」などに使われる

  • 「平行法」は表現が印象的で、説得力をもつものになります。ですので、「 成句・イディオム」や「 警句」などにも多く使われます。
  • キーワード:説得力、説く

  • 効果3安定したリズムによって、印象を深めることができる

  • ほとんど同じ長さの対になっていることばが、くり返し登場します。このくり返しによる安定したリズムによって、より一層、印象を深めることができる。
  • キーワード:安定、落ちつく、印象、焼き付ける
  • 使い方
  • 使い方1対になるフレーズを、何回か続ける

  • シンメトリックの関係にあることばを、何度もくり返し登場させます。ことばの形式が同じものを、「平行法」意味が対称のものを指すこともあります。ですがあくまで、形式が対称になっているものを、「平行法」としておきます。くわしくは、下にあるをご覧ください。
  • キーワード:シンメトリック、釣りあう、釣りあい、均衡、バランス、対称
  • 例文を見る)
  • 引用は『なるたる』1巻の表紙です。

    問題となる部分は、もちろん、
    • 骸なる星
    • 珠たる子
    という部分です。

    この文の形式に着目すると、並列しているのがわかります。
    • ○○なる○
    • ○○たる○
    という並列関係が成り立っています。ですので、この「形式の対比」をレトリックとみて、「平行体」の例とさせていただきます。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1ほかのレトリック用語との違い

  • 深く知るa「平行法」と「等長句」との違い
  • この「平行法」とほぼ同じレトリックとして、「等長句」というものがあります。しかし、
    • 「平行法」は、同じ長さになっているものが文法的に共通している点に着目したもの
    • 「等長句」は、同じに長さのものがくり返されているという点に着目したもの
    という違いがあるだけです。注目している点が異なっている、ということに過ぎません。実質的には同じことを指しているといっていいと思われます。

  • 深く知るb「平行法」と「同形節反復(イソコロン・パリソン)」との関係
  • 「平行法」は、「同形節反復(イソコロン・パリソン)」というレトリックに近いものです。このサイトでは、この2つのものは同じだとしておきます。

    この「平行法」などのコントラストをつくるレトリックは、「 対照法・対句」にまとめてあります。そちらもご参照下さい。

  • 深く知るc「平行法」と「対句」との関係
  • 「平行法」は、「 対照法・対句」と近い関係にあります。どちらも、かたちが同じ文をくり返すからです。つまり、文のパターンがいっしょなのです。

    ただ、「 対照法・対句」の場合には、表現している文の意味についても対になっていることが必要です。つまり例文で言えば、「骸」と「珠」とは対義語ではないし、「星」と「子」とも対義語ではないのです。そのため、例文は「 対照法・対句」ではないと考えるのが一般的です。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 並行体・並行・平行法・並行
  • 呼び方2
  • イソコロン・パリソン・類節並列
  • 呼び方1
  • 同形節反復・同形句反復・並列・等価対応
※「平行法」と「イソコロン・パリソン」とを、区別する考え方もあります。ですがとりあえず、同じものとして扱っていくことにします。
  • 参考資料
  • ●『レトリックとテクスト分析——レトリックの視点からのテクスト分析入門』(ハインリヒ F.プレット[著]、永谷益朗[訳]/同学社)
  • 「同形節反復」と「並行(法)」とのあいだにある、微妙な違いが説明してあったりします。ですが翻訳書なので、少し難しいかもしれません。「σκωλον」と書いてあったら「イソコロン」のことだと分かるヒト向け。
  • ●『日本語修辞辞典』(野内良三/国書刊行会)
  • 日本語の例文が載っている本を探しているときには、こちらがオススメ。夏目漱石『草枕』と尾崎紅葉『金色夜叉』がを例文にしています。
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  • 余談

  • 余談1「なるたる」というタイトルの作りかた
  • 『なるたる』というタイトルは、「○○なる○/○○たる○」の「なる」と「たる」をくっつけてつけられたタイトルなんだそうです。

    『月西』を「はにはに」と言ったりする例もありますし、今後、こういう省略のやり方がふえてくるかもしれません。

    強いてレトリックとして考えると。これは、「はさみ言葉」とよばれるものに似ている気がします。まあ、レトリックというよりも「ことば遊び」という感じで使われることの多いことばだけれども。

     〔つけ足し〕
    『君が主で執事が俺で』のことを「がでがで」と略することがあるらしい。だけれども、「こういう省略のやり方がふえて」いるというほどでもありません。今のところ。