冗語法:表現を伝える必要以上に重ねるもの
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冗語法 じょうごほう pleonasm

『極上生徒会』1巻6〜7ページ(まったくモー助・コナミ株式会社/メディアワークス DENGEKI COMICS)
  • ナレーション「私立宮神学園には
  • 教職者よりも
  • 権限のある
  • 美しき乙女たちがいる」

  • 宮上学園極大権限保有
  • 最上級生徒会
  • 略して——
  • ——(ここ3コマとばします)——
  • 蘭堂りの「極上生徒会でーす!!」
-『極上生徒会』1巻6〜7ページ(まったくモー助・コナミ株式会社/メディアワークス DENGEKI COMICS)
  • 定義重要度2
  • 冗語法は、相手に伝えるためには多すぎると思うような必要以上の表現を、いくつか重ねるレトリックです。

  • 効果

  • 効果1伝えようと思うことを明らかにする

  • 「冗語法」によって作られるのは、基本的には必要ではないフレーズです。しかし、一見すると無駄と思えることばであっても、積みかさなっていくことでひとつの意味を表すようになります。それが「冗語法」です。
  • キーワード:明確化、きっちり、きちんと
  • 例文を見る)
  • 例文は『極上生徒会』から。

    主人公は、蘭堂りの。

    おはなしの舞台となっているのが、「極上生徒会」という生徒会。「蘭堂りの」も入っている。

    そして、今回このページで説明していく「冗語法」となっていが、この「極上生徒会」という生徒会の名前そのもの。

    なにせ、この生徒会の正式名称は、
    「宮上学園極大権限保有 最上級生徒会」
    なのだから。

    さて。
    ここに出てきた「極大権限保有」という言葉と、「最上級」という言葉。意味が重なっている。だいたい、「極大権限」を保有していたら「最上級」に決まっている。だから、同じような意味の言葉が続けて使われていることがいえます。ですので「冗語法」といいうことができます。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1同じような言葉を並べることによって、「おかしさ」を出すこと
  • 『あぁ愛しの番長さま』3巻96〜97ページ(藤方まゆ/白泉社 花とゆめCOMICS)
    • 雄二「腕まくれ」
    • ——(ここ3コマ省略して)——
    • 未来「あのバカップル(認定)
    • 2人っきりに
    • しちゃおうよ」
    • レイチ「おーいいね!
    • じゃあ さっそく…」
    • 「ぎゃ——!!
    • 突如腹が腹痛——っ
    • 雄二「ホント 突如だな!」
    • そうか「大丈夫ですか
    • 日本語 変ですよ」


  • この「おかしさを出す」というのが、もっとも大きな「冗語法」の効果といえます。ま、「 ことば遊び」に近いものです。

    この、「冗語法」の持っている1つめの効果。

    その例としては、
    「馬から落ちて落馬する」
    のようなものを、あげることができます。

    ようするに、どうみても余計に置かれた、意味なく長い表現のこと。これが、いちばんスタンダードな「冗語法」の効果です。

    いちいち例を出すほどのものなのかは、あやしいのですが。いちおう例を、あげてみます。

    画像は『あぁ愛しの番長さま』3巻からです。

    右の場面は、徳川工業高校の仲間どうしで、夏祭りに出かけたというところです。

    主人公は「平山そうか」。徳川工業高校に1人しかいない女子の生徒。そして、1人しかいないがために「ツチノコ」のように珍重される。そして、(偶然のできごとから)番長になる。

    まあ、番長とはいうものの。なんだか、「そうか」は天然さんっぽい。どうみても工業高校のボス、っていうかんじではない。

    そんな番長こと、「そうか」が雄二と2人。なんか、ピンクなオーラを放っている。そこで冷やかし半分に、ほかのメンバーが「2人きりにしちゃおうよ」と画策。

    まず1人目は、レイチ。2人から離れるための言いワケとしてレイチは言う。
    腹が腹痛——っ
    というわけで。ここが「冗語法」ということになるわけです。

    あからさまに、アヤシイ。見るからに、言いワケくさい。そういった、レイチの挙動が不審なのをあらわすために「冗語法」が使われています。

  • 深く知る2同じような言葉を並べることによって、その部分を「強調」すること
  • たとえば。
    「いまでは老いも若きも、みんながケータイを持っている。」
    という例を見てみることにします。すると、このフレーズにある「老いも若きも」という部分は、「みんなが」というのと意味がダブっています。つまり、その意味では「冗語法」といえます。

    ですが、この「老いも若きも」の部分を、取りはずしてみる。つまり、
    「いまでは、みんながケータイを持っている。」
    というふうに短くしてみる。すると、読み手(聞き手)のほうとしては。少し、ことばの受けとりかたに違いがうまれます。つまり、話し手(書き手)は、どこの部分にポイントをおいて伝えようとしているのか。その点が、変わってくるのです。

    それは逆に言うと、「老いも若きも」というフレーズ。これには、話し手(書き手)が「伝えたいと思っているポイント」がどこなのか、ということを知らせる意味を持っていたということになります。

    なので。「強調」したい部分を知らせようとして、表現がダブったもの。つまり、話し手(書き手)が重点を置いている部分を伝えようとするもの。こういったものも、「冗語法」の1つとしてあげることができます。

  • 深く知る3「冗語法」を使った言い回しが、決まり文句になっているもの
  • たとえば、「目で見る」とか「耳で聞く」といった表現。こういったものは、あまり気にとめることなく使われます。とくに話しことばでは、注意しないで会話に使われていたりします。

    ですが。
    よく考えると、ちょっとナゾのある言いまわしです。「見る」ときに使うのは、「目」のほかには考えにくいです。また、「聞く」ときに働くのは、「耳」だと思うのがふつうです。

    というか。ヘレン・ケラーのような超人でないのなら、「目」以外で「見る」ことはできない。そして、「耳」以外で「聞く」ことはできない。

    そういったわけで。たしかに、単にことばを伝えるということだけを考えるならば、必要ない。でも、その表現をすることが普段の「決まり文句」になっている。なので、とくに話しことばでは特別な意味があるというわけではなくて、お決まりのフレーズとして使われる。こういったものも、「冗語法」となります。

  • 深く知る4『日本語の文体・レトリック辞典』に書かれている、「冗語法」の分類
  • 上に書いたのとは、ちょっと違うのですが。
    『日本語の文体・レトリック辞典』には、「冗語法」が持っている3つの役割というのが書いてあります。そして、その3つの役割に、それぞれレトリック用語としての名前が与えられています。カンタンに省略して書いてみると、
    • 慣用重複」:誤解を防ぐために、似た意味の言葉を重ねるレトリック
    • 強調重複」:伝えたいことを強調するために、似た意味の言葉を重ねるレトリック
    • 情化法」:伝えたい言葉の前に修辞をつけくわえるレトリック
    といったぐあいです。

    で、かいつまんだ引用をつづけると、次のようになります。——

    たしかに、ここであがっている「 慣用重複」と「 強調重複」と。これは、かなり似てる。

    けれども、
    • おもに「不注意」のほうを担当するのが、「 慣用重複

    • おもに「強調」のほうを担当するのが、「 強調重複
    というように分けることができる。

    ——とのことです。

    くわしくは、それぞれのページを見てみてください。

    なお。
    この「宮上学園極大権限保有最上級生徒会」の場合には、「 強調重複」に分類できます。

    この漢字ズラズラの、やけに長ったらしい固有名詞は、それ自体が「強調」する効果があります。それに加えて、「極大権限保有」と「最上級」とがならんでいる表現。これもまた、「強調」のためのもの、つまり「 強調重複」だといえます。

  • 深く知る5不注意による言い間違いと「冗語法」
  • 『レトリック辞典』では、「冗語法」には「不注意による間違いを含めない」としています。

    具体的にその説明を引用してみると、
    不注意による間違いではなく、ある種の表現効果をねらった意図的なものである。
    としています。

    ですがこのサイトでは、そのようなものであっても「冗語法」に含めて考えることとします。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 冗語法
  • 参考資料
  • ●『レトリック辞典』(野内良三/国書刊行会)
  • 「冗語法」を説明している本としては、こちらが一番くわしく書いてあるのではないかと思います。例文がたくさんあるものとしては、同じ者の『日本語修辞辞典』(野内良三/国書刊行会)が役に立つと思います。