明示引用:出典や作者などが明記してある方法で引用すること
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明示引用 めいじいんよう (allusion)

『星色の翼』25〜26ページ(折原みと/実業之日本社 MBコミックス)
  • 瑞希「かなわなくなんか …ないよ
  • 僕は かならず 現実にしてみせるから」
  • 瞳 (え…?)
  • 瑞希「そりゃあ 今はまだ
  • 身体的な選考基準も厳しいけど
  • 航行技術の進歩で
  • どんどん普通の人でも
  • 宇宙へいけるようになるよ
  • 『今日の不可能は明日可能になる』
  • 今から100年以上も前に
  • ロケット工学の理論を完成させた
  • ロシアの“ツィオルコフスキー”
  • って科学者の言葉だよ
-『星色の翼』25〜26ページ(折原みと/実業之日本社 MBコミックス)
  • 定義重要度2
  • 明示引用は、引用をするとき、出典や作者などが明記してある方法をとるレトリックです。つまり「誰の書いた、どの部分からの引用なのか」が、書かれている「引用」です。

  • 効果

  • 効果1自分以外のひとの意見をとりいれることで、強い説得力が出る

  • 自分が主張したいと思っていることに、「明示引用」を使う。その「明示引用」を用いるときには、その出典やもともとの作者を明らかにすることになる。そのため、こういったことを明示することによって、説得力を増すチカラがあります。
  • キーワード:説得、説く、権威、重み、威厳、威信、威光、重々しい、どっしり

  • 効果2自分が持っている意見を、補強することができる

  • 「明示引用」によって、他人の意見を受け入れる。このことによって、自分のもっている意見をより強く訴えかけることができます。
  • キーワード:補強、強化、強める、強まる、増加、増強、盛り上げる、盛り上がる、強まる、強める

  • 効果3ほかの意見を引用することによって、客観性が出る

  • 自分だけの意見を示すと、独りよがりのものなのではないかと思われることもあります。そういった疑いをぬぐい取るために、ほかの意見であるものを引用する。そのことによって、より客観性を出すことができます。
  • キーワード:客観、妥当、絶好、好適、適当、適正
  • 使い方
  • 使い方1引用であることを、ハッキリしめす

  • 引用であることを、ハッキリしめす。これが「明示引用」の特徴です。「暗示引用」とは、この点が異なります。
  • キーワード:ハッキリ、くっきり、ありあり、鮮やか、鮮明
  • 使い方2「ことわざ」や「格言」などを使う

  • 「格言」などの「 成句・イディオム」。こういったものの中には、もともと誰が使ったか(または、どんな本で書かれたか)が、分かるものもあります。ですので、「明示引用」として使うこともできます。
  • 例文を見る)
  • 例文は『星色の翼』から。
    主人公は和倉瞳という女の子。

    彼女は偶然、同級生だった川本瑞希という男の子と出会い、親しくなる。瑞希は「科学者になって宇宙ステーションで働くのが夢だ」と言う(14ページ)。

    しかし、その夢の実現のためには、大きな壁があった。
    瑞希は、「心臓の病気」にかかっていたのだ。

    瑞希は言う。「心臓の弁がちゃんと開かない病気なんだ」「もうすぐ人工弁をとりつける手術をするんだよ」と。

    だが、心臓の病気のことを聞いた瞳は、
    • 「でも…宇宙飛行士の選考って
    • すごく厳しいんでしょ?
    • 身体に少しでも欠陥があったら、
    • 落とされるに決まってる バカみたいっ…!
    • あんな かないっこない夢
    • 夢中になって話して!」
    • (24〜25ページ)
    と反論する。
    その言葉に対しての瑞希の想いが、引用したシーンです。
    『今日の不可能は明日可能になる』
    ということを書いただけでは、「 暗示引用」ということになります。

    けれども、その続きを読んでいくと、
    ロシアの“ツィオルコフスキー”
  • って科学者の言葉だよ
ということが書いてあります。つまり、誰の言葉を引用したのかが明らかになっています。ですので、これは「明示引用」ということになります。

なおツィオルコフスキーという人は、「ロケット」に関する研究をした科学者です。だから、「宇宙ステーションで働くのが夢」だという瑞希が引用して使ったのだと思います。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「明示引用」と「直接引用」「引用法」との違い
  • まず、このページで解説しているレトリックについては、「明示引用」という呼びかたをします。つまり、「引用をするとき、出典や作者などが明記してある方法をとる」かたちについては、「明示引用」という名前を当てておきます。

    そもそも「明示引用」というレトリック用語は、あまりメジャーなものではありません。それにもかかわらず使用するのには、つぎのような理由があります。

    まず、「直接引用」という用語があります。これも、「明示引用」と同じような意味で使われることがあります。
    ですが、この「直接引用」という用語は「直接話法」との混同が生まれる可能性があります。ですのでこのサイトでは、採用しませんでした。

    また、「引用法」という用語があります。これも、「明示引用」と同じ意味で用いられることがあります。
    ですが、この「引用法」という用語は「明示引用」だけでなく、「暗示引用」も指し示していることがあります。ですのでこのサイトでは、採用しませんでした。

    以上のような理由から。あまりメジャーではないことを承知しつつも、「明示引用」という名前で統一しておきます。

  • 深く知る2「明示引用」と「暗示引用」との違い
  • 「誰の書いた、どの部分からの引用なのか」について書かない、明らかにしない。これを「 暗示引用」といいます。

    「明示引用」を使うと、自分の考えについての説得力が増したり、言葉に権威をつけることができます。これは、「 暗示引用」と同じ効果だと言えます。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 明示引用
  • 呼び方3
  • 直接引用
  • 参考資料
  • ●『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)
  • わりと長めに、「明示引用」を扱っています。
  • 余談

  • 余談1ツィオルコフスキーのマメ知識
  • 「ツィオルコフスキー」という科学者。

    この人が「9歳で、ほぼ完全に聴力を失ってしまった」、つまりハンディキャップを持った人なのです。

    そのことを知ると、同じくハンディキャップを負っている瑞希が言った言葉の説得力が、一段と強くなるでしょう。ただ、ふつうの人がそこまで知っているとは考えづらいけど。