例文は『星色の翼』から。
主人公は和倉瞳という女の子。
彼女は偶然、同級生だった川本瑞希という男の子と出会い、親しくなる。瑞希は「科学者になって宇宙ステーションで働くのが夢だ」と言う(14ページ)。
しかし、その夢の実現のためには、大きな壁があった。
瑞希は、「心臓の病気」にかかっていたのだ。
瑞希は言う。「心臓の弁がちゃんと開かない病気なんだ」「もうすぐ人工弁をとりつける手術をするんだよ」と。
だが、心臓の病気のことを聞いた瞳は、- 「でも…宇宙飛行士の選考って
- すごく厳しいんでしょ?
- 身体に少しでも欠陥があったら、
- 落とされるに決まってる バカみたいっ…!
- あんな かないっこない夢
- 夢中になって話して!」
- (24〜25ページ)
と反論する。
その言葉に対しての瑞希の想いが、引用したシーンです。
『今日の不可能は明日可能になる』
ということを書いただけでは、「
暗示引用」ということになります。
けれども、その続きを読んでいくと、ロシアの“ツィオルコフスキー”
って科学者の言葉だよということが書いてあります。つまり、誰の言葉を引用したのかが明らかになっています。ですので、これは「明示引用」ということになります。
なおツィオルコフスキーという人は、「ロケット」に関する研究をした科学者です。だから、「宇宙ステーションで働くのが夢」だという瑞希が引用して使ったのだと思います。