慣用句:ある状況や場面に応じた、決まった言いまわし
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慣用句 かんようく collocation

  • 定義重要度4
  • 慣用句このページでは、慣用として使われる「成句・イディオム」表現のうち、「慣用句」にだけ当てはまることが書かれています。ですので、「成句・イディオム」のすべてに共通している特徴については、「成句・イディオム」ページをご覧ください。

  • 効果

  • 効果1伝統に裏づけられているため、説得力が強まる

  • そのシーンにピッタリの「慣用句」を使う。そのことで、より説得力のあるものになります。「慣用句」は、その文化がもっている伝統や権威によって裏づけられたものだからです。
  • キーワード:説得力、説く

  • 効果2おもに話し言葉で効果を発揮する

  • 「慣用句」は、おもに話しことばで使われるものです。書きことばで「慣用句」を使うのは、ありふれていて安っぽい感じを与えてしまいます。
  • キーワード:話しことば、口語
  • 使い方
  • 使い方1状況や場面に応じて使う

  • 「慣用句」は、場面に応じて使うことになります。ふつうのことばでも、たしかに場面に依存するといったことは、よくあります。ですが「慣用句」のばあい、「慣用句」自体が特殊な言いまわしだということもあって、使う場面は限定されます。
  • キーワード:場面、状況
  • 使い方22つ以上の単語が結びついて、離すことができない

  • いちど結びついた言いまわしは、切り離すことができなくなっています。もしも切り離すことを考えたばあい、「意味不明」になるか、または「めったに起きないことを表現する」
  • キーワード:固定化
  • 使い方3結びつく前にあった1つ1つの単語とは、意味が大きく違う

  • 2つ以上の単語が「結びつく前」意味と、現実に「結びついた後で生まれた」ことで生まれたフレーズの持っている意味。この2つは思いもつかないほど大きく異なることになります。ほとんどの場合、予測するのはムリです。
  • キーワード:結びつく
  • 使い方4慣用化によって生まれた意味だけが、残っている

  • たとえば、「手を焼く」という成句(イディオム)を考えてみる。すると、この「手を焼く」というのは、「トラブルを処理するのに苦労する」というような意味です。逆にいえば、「火で手をやけどする」といった意味では滅多に使われないということです。ですので「 成句・イディオム」によってつくられたことばは、もはや慣用化してできたことばの意味だけを持ちあわせていることになります。
  • キーワード:慣用、慣用化
  • 注意

  • 注意1慣用句を使う相手が、その慣用句を知っていなければならない

  • 慣用句に対して知識がとぼしい人には、慣用句を使うのを避けたほうが懸命です。柔道家の山下 泰裕が皇居の園遊会に招かれ、昭和天皇から「柔道は、骨が折れますか(柔道は、大変ですかの意)」と尋ねられたところ、「はい、昨年骨折しました」と答えて周囲の爆笑を誘ったエピソードがあります。これは笑い話で済んだようですが、相手が慣用句を知っているかは、かなり重要です。

  • 注意2意味が流動化する

  • 「慣用句」をはじめとする「 成句・イディオム」は、ときどき意味を大きく変えることがあります。たとえば、「犬も歩けば棒に当たる」という慣用句。これは、もともとは「時には運にめぐまれることがある」という意味をもっていまいた。ですが最近では、「でしゃばって何かをすると、わざわいが起きてしまう」というような意味に変わってきています。
  • キーワード:流動化
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「慣用句」ができるまで
  • このサイトでは、「 成句・イディオム」を3パターンに分けて説明しています。その3つというのは、「ことわざ」タイプ、「格言」タイプ、それと「慣用句」タイプです。

    そして、このページでは「慣用句」タイプに当てはまることについて、紹介していきます。

    で。
    その3つのなかで、「慣用句」タイプに分類されているもの。このグループは、どのようにできあがったかという起源が、ほかのグループとは大きく違います。ですので、この点から見ていきます。

    この「慣用句」ができあがるまでの流れは、つぎのようなものになります。

  • 深く知るaはじめは、その場で使う1回限りのものだった
  • 「慣用句」となるフレーズ。それは、もとから「慣用句」にしようとして考え出されたものではないはずです。つまり、あるとき1回だけ使われたはずのものだったのです。

    この点は、はじめから「 成句・イディオム」になることを狙ったものとは、まったく逆です。「金言」ならば、中国の古典に書かれている文章を抜き出したモノです。なので、はじめから「 成句・イディオム」になることを狙ったものです。

    ですが「慣用句」については。このような、ウラ事情はありません。

  • 深く知るb1回だけのはずだったものが、何度も使われはじめた
  • 上で書いたように。

    「慣用句」は、1回限りの使い捨てのフレーズだったはずです。しかし、その1回使われたシーンと似た場面に出会ったときに、使い捨てだったはずのフレーズが、もういちど使われ出した。そして。このことが何度も行われたことで、「慣用句」が成立した。と、こういうわけです。

  • 深く知るcついには、「慣用句」ではない表現をすることが難しくなる
  • 「慣用句」が、広がったすえに起こること。それは、「ぞのシーンでは、慣用句では言いまわしをすることができない」という状況になるということです。

    「慣用句」というと、例として思い浮かべにくいかもしれませんが。たとえば、「おはようございます」とか「ありがとう」とかいった「あいさつことば」。このような言いまわしは、使われる状況によって限られます。そして、それだけではなく、そのような状況では、もはや使わないことが難しくなります。

    このようなことは、「慣用句」がもっている大きな特徴だといえます。

  • 深く知る2「慣用句」に関する、そのほかの特徴
  • 「慣用句」には、上に書いたような特徴があります。つまり、その場面では使うことが義務づけられているかのような強制力があるということです。

    そのほか「慣用句」の特徴としては、次のようなものをあげることができます。

  • 深く知るaそれぞれの単語が、強くの結びついている
  • 「慣用句」が成りたつと。そのフレーズは、もはや「慣用句」だけで「1つの単語」ではないかというほどの結びつきが生まれます。

    たとえば「ありがとう」という言いまわし。日常の生活では、これはカタマリとなった表現として使っているはずです。つまり「有る」と「難い」に分解して考えはじめることは、ふつうしません。

    その意味で「慣用句」は、とくに固定化がすすんだ表現だということができます。

  • 深く知るbくり返し起こる、似たような場面に使われる
  • ヒトが、人間どうしで生きていくにあたって。そこには、しばしば出会うことになるようなシーンがあります。

    たとえば、「お願いする」とか、「お礼を言う」とか、「あいさつをする」とか、「お悔やみを言う」とか。人間がお互いに社会をつくっていくなかでは、同じような状況が現れることも多くあります。

    そんなときに。この「慣用句」を使うと。
    とりあえず、その「慣用句」を言っておけば、無難です。とくに、まず口にする言葉としては、問題ないはずです。

    といったわけで。この「慣用句」は、おおいに役に立つものだといえます。

    ただし。
    「場面によって使いかたが決まっている」ということ。それは逆に言うと「決められた場面ではないのに使うとオカシイ」ということでもあります。

  • 深く知るc話し手=書き手の主張を支える
  • あくまで、その「慣用句」が使うことのできる「限られた場面」にしか通用しないのですが。

    その状況にピッタリ当てはまる、「慣用句」があるということ。それは、

    「成句・イディオム」に含まれるレトリック用語は、たくさんあります。それは言いかえれば、「 成句・イディオム」と同じようなレトリック用語の数が多いということです。

    では、ナゼ「レトリック用語がたくさんあるのか」。その理由は、「だれにでも分かるような、ハッキリした境界線を引くことができない」というところにあります。境界線をつけるのが、あまりうまくいかない。うまくいかないので、いろんな人が境界線の引き方にチャレンジをした。結果、ぜんぜん統一性のないレトリック用語だけが、どんどんつくられていった。…そ、そういったことです。

  • 深く知る3「慣用句」に似たレトリックとの比較
  • 「慣用句」に似た意味を持ったレトリック用語は、たくさんあります。それは言いかえれば、「慣用句」と同じようなレトリック用語の数が、多いということです。

    では、ナゼ「レトリック用語がたくさんあるのか」。その理由は、「だれにでも分かるような、ハッキリした境界線を引くことができない」というところにあります。厳密なれラインを引くのが、あまりうまくいかない。うまくいかないので、いろんな人が境界線の引き方にチャレンジをした。結果、ぜんぜん統一性のないレトリック用語だけが、どんどんつくられていった。…と、そういったことです。

    そこで、このサイトでは実験として。
    3つの大きなパターンに分けることを提案してみます。それをまとめたのが、下に書いた表です。

    「パターン通りの言葉づかい」を使うワナ

    ごくふつうの会話 ・ネットとかの文
    「パターン通りの言葉づかい」のうち
    本来の意味との距離が近い
    ものを使うと
    決まり文句・クリシェ(cliche)」ばかりになって
    無味乾燥な文になりやすい
    ごくふつうの会話 ・ネットとかの文
    「パターン通りの言葉づかい」のうち
    本来の意味との距離が遠い
    ものを使うと
    ことわざ(adage)・慣用句(collocation)
    あいさつ言葉」が重なっていく結果
    隠語のような閉鎖的な文になりやすい
    難しそうな文
    「パターン通りの言葉づかい」のうち
    本来の意味との距離が近い
    ものを使うと
    格言・金言
    警句・箴言」がが目立ってしまうため
    小難しいだけで薄っぺらな文になりやすい
    難しそうな文
    「パターン通りの言葉づかい」のうち
    本来の意味との距離が遠い
    ものを使うと
    寓言(parable)・寓話(fable)
    故事成語」が重なっていく結果
    専門家だけしか読めない文になりやすい


    うまくまとめきれていなくて、すみません。

    ただ私(サイト作成者)にとっては、考えるところが多くあります。

    「比喩になるのと陳腐になるとのと違いは何か?」とか「決まった言葉づかいのうち、反語信号になるものとならないものとの違いは何か?」とか「株式用語は、なぜ小難しいだけで薄っぺらいものが多いか?」とか。「なぜ(笑い)はwのような隠語になっていったか?」とか。「「エセ科学」と「科学」とをシロウトが区別できないことに、なぜ科学者が気がつけないのか?」とか。

    私(サイト作成者)には残念ながら、そこまで追究している時間はなさそうです。時間に余裕のある人が、才能のムダ遣いになるかもしれませんが論究していただけるとうれしく思います。

  • 深く知る42つ以上の単語が結びついて、離すことができない
  • これは、上に書いたことについての補足です。

    上には「2つ以上の単語が結びついて、離すことができない」と書きました。ですが、「慣用句」の性質について、さらに細かく分けてみる。すると、さらに3つに分類することができます。
    • もしも単語どうしを離してみると、ふつうではあり得ない意味になる
    • (例)「手を焼く」を分けてみると、「手」が「焼ける」ということになってしまう。

    • もしも単語どうしを離してみると、意味が180度変わってしまう
    • (例)「負けず嫌い」は、「負ける」+「ず(否定)」+「嫌い」となる。そのため「負けないのがキライ」だということを言っていることになる。

    • 単語どうしを離すと、意味不明になる
    • (例)「目をむく」を言いまわしは、それぞれ離してみると「目」が「剥ける」ということになる。だけれども、「目」が「剥ける」という状態は「意味不明」としかいいようがない。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 慣用句
  • 参考資料
  • ●『比喩と理解(認知科学選書 17)』(山梨正明/東京大学出版会)
  • この本で「イディオム」と呼んでいるのは、おおむね、このサイト「慣用句」と呼んでいるものです。くわしく書いてあるので参考になると思います。
  • ●『新版文章表現辞典』(神鳥武彦・村松貞夫[共編]/東京堂出版)
  • このサイトを作るにあたって、いちばん役に立った本です。「使い方」についても書いてあるのは、珍しいと思います。