異綴同音異義:発音が同じで、意味とつづりが異なる
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異綴同音異義
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異綴同音異義
異綴同音異義
いてつどうおんいぎ
homonymy
武(自分を変えないと…!)
「…よし!
やる
やる
やるっ!!!」
ナズナ「わっ!!」
——ここ2コマ省略します——
ナズナ「…で?
やる
って?」
武「…へ?」
ナズナ「俺は
やる
ぞー!」
…とか何とか?」
武「あ… いや別に…
そんな大したことじゃ…」」
ナズナ「えー そんかなあ?
何か決意のこもった<「
やる
ぞ」
だったけどなー?
教えてよー何を「
殺る
」の?
それとも「
犯る
」?」
武「そんな物騒な
やる
」じゃないよ!!」
-『まなびや』1巻28〜30ページ(小島あきら/スクウェア・エニックス ガンガンコミックスJOKER)
異綴同音異義
は、くり返される単語が、音は同じだけれども、意味も違うしつづり方が異なる。そういうレトリックです。つまり、発音が全く同じでありながら、書き方と意味が違っているものが出てくることをいいます。
洒落・掛けことばなどに利用される
「異綴同音異義」は「洒落」「掛けことば」といったことば遊びの材料になります。
:ことば遊び・洒落・掛詞
「異綴」で「同音」で「異義」な単語を使う
つづり方が異なるので、「異綴」。発音が同じなので、「同音」。意味が異なるので、「異義」。3つ合わせると「異綴同音異義」。バラバラに分解して考えないと意味がつかみにくいのですが、ようするにそういったことです。
誤解の原因となる
たとえば「市道」と「私道」。この2つは、「異綴同音異義」です。しかし、おたがいが「同音」であるために、誤解をまねきやすくなります。私(サイト作成者)は、「私道」のことだと思って話しを聞いていた。そうしたら、だんだんと相手の思っていることと自分の考えていることがかみ合っていないことに気づいた。じつは、「私道」ではなく「市道」だったおんだ。そんなこともあるので、似たようなことばのある単語は、気をつけて使ったほうがよさそうです。
で。
ページのいちばん最初に引用したものは、『まなびや』1巻からです。
主人公は、槙嶋武(まきしま・たける)。新しく高校生になった。今回のシーンは、今日おこなわれた入学式が終わったあとのできごと。
武は、中学生までの学校生活に、いまいち納得していなかった。それを武は、自分のハンパな生き方のせいだと考えた。
そこで、気合いを入れるために
「よし!
やる
ぞ!!
やる
っ!!!」
と気合いを入れる。ここが、引用したシーンです。
ここで、
やる
殺る
犯る
を見てみる。
すると
つづりは、それぞれ違っているので「異綴」(やる≒殺る≒犯る)
発音は同じなので「同音」(ヤル=ヤル=ヤル)
意味は、それぞれを違っているので「異義」(やる≒殺る≒犯る)
となります。
したがって、「異綴同音異義」となります。
タクト「満月っ
オリコン
が
届いたぜ!!」
満月「
『お離婚』
なんと
切ないことが…っ」
タクト「ドリキャスの
キーボードみたいな
変換かましてんじゃ
ねぇよ!!
『天使』100位にも
入ってねーぞ!!」
右の引用は、『満月(フルムーン)をさがして』2巻からです。
主人公は、「満月(みつき)」という女の子。12歳。
「満月」は、命に関わるのどの病気にかかっている。そのため手術を勧められている。しかし、彼女は手術によって声が出なくなり、歌えなくなることから、手術を拒否している。
そんな中。「タクト」と「めろこ」という死神コンビが登場する。そして、のどの病気が原因で、余命があと1年だと言われる。
けれども「満月」は、歌手になりたいと強く想っていた。そして、その強い想いに心を打たれた死神の「タクト」は、彼女を、のどの病気のかかっていない健康な姿にする。そして、オーディションを受けて、見事に合格。
そういったわけで、彼女は歌手としてデビューすることになった。
それで、デビュー曲の売れ行きについて語っているのが、引用の場面。
「タクト」の、
オリコン
が届いたぜ!!
に対しての、「満月」のリアクションが、
『お離婚』
…!
というもの。この部分が「異綴同音異義」になっています。「オリコン」と「お離婚」とでは、つづり方が全く違います。でも、発音はどちらもおなじです。こんなものが、「異綴同音異義」です。
日本語にある「同音異綴」の単語
大切なことが、1つあります。
それは、日本語には「同音異綴」のことばがたくさんあるということです。発音が同じなのに書きあらわし方が違うということばを、多くもっているということです。
そのため日本語では、この「異綴同音異義」のことばを多く見つけることができるます。つまり、欧米で使われている英語とかフランス語とかいった言語よりも、書きかたが異なるのに音は同じだという単語を多く探しだすことができるのです。
そして、ここでいう「音」には「アクセント」も含めて考えることができます。このばあいの「アクセント」というのは、「音」が高いとか低いとかいう意味です。つまり、「音が同じ」ということは、ただ単に「五十音表」で同じ文字になるというだけではないのです。日本語は、「アクセント」まで同じという単語が多いのです。
たしかに、当てはまらないものも少しはあります。たとえば、
空から降ってくる「雨」と、キャンディーの「飴」
のようなもの。つづりは両方とも「アメ」なのに、「アクセント」は違っています。東京アクセントにしたがうと、「雨」は「ア」が高くて、「飴」は「メ」が高い。カタカナでは同じ「アメ」なのに、「アクセント」は異なっています。
ですが、このようなものは例外です。日本語ではふつう、「アクセント」まで一致しています。
しんこう:進行・信仰・振興・親好・侵攻・親交
きせい:既成・寄生・帰省・規制・奇声・気勢
のように。こちらのほうが、日本語では大多数です。上に出してきた合計12個のことばは、そろって2番目の音から高くなる。このことも、日本語で目だつ特色です。
なので、日本語では「異綴同音異義」が効果的にはたらくことが出来ます。「アクセント」も一緒だと、より強く「同音」になっているというこを感じることができるのです。
「異綴同音異義」と「ことば遊び」
この「異綴同音異義」は、「ことば遊び」にも多く使われます。すぐに思いつくのが、
貴社の記者が汽車で帰社した
というような文。「貴社」「記者」「汽車」「帰社」という4つの単語は、どれも書きあらわす漢字は違います。でも、そのいずれもが「きしゃ」と読みます。もしこの文章が、
会社のライターが電車で帰った
だったりしたら、全然おもしろくないのです。あくまでも、「きしゃ」という音が4回続くことに意味があります。「異綴同音異義」を利用した「ことば遊び」の例といえます。
「異綴同音異義」と「同綴同音異義」との関係
なお、この「異綴同音異義(homophone)」と似たものに、「
同綴同音異義
」というのがあります。
一般的にいって「異綴同音異義(homophone)」と「
同綴同音異義
」との違いは、「つづり方」が同じがどうかで区別します。つまり、つづりが同じ=「同綴」のばあいには「
同綴同音異義
(homonymy)」で、つづりが違う=「異綴」のばあいには「異綴同音異義(homophone)」ということになります。
「異綴同音異義」に似たレトリック用語との関係
この「異綴同音異義」と似たレトリック用語は、いろいろとあります。それを図で示すと、次のようになります。
発音
綴り字
意義
Homophone
─
○
×
×
┬
Homonym
Homograph
─
○
○
×
┘
└
×
○
×
─
Heteronym
○は含む、×は含まないの記号。
『現代英語学辞典』(石橋幸太郎[編集代表]/成美堂)から抜粋
上の図を見ただけでも、かなり混乱していることがわかります。
たとえば「Homograph」は、発音と綴り字が同じで。意義が異なるものをさす。けれども、発音と意義が違っていて、綴り字が同じもののことを言う場合もある。
といった感じで、うまくまとめることは、非常に困難です。
異綴同音異義(語)<
異つづり同音異義語・ホモフォーン
『現代英語学辞典』(石橋幸太郎[編集代表]、勇康雄・宇賀治正朋・勝又永朗・鳥居次好・山川喜久男・渡辺藤一[編集]/成美堂)
これは辞典だけれども、「異綴同音異義」についてスペース使って説明してます。
「お離婚」って何?
…しかし、「お離婚」って普通は言わないと思う。「離婚」の前に「お」がついた「お離婚」。あまり使わないでしょう。
試しにgoogleで「お離婚」を検索すると、
もしかしてオリコン
という表示が出たりする。
なおgoogleでは、「お離婚」は、約400件のヒット。「オリコン」は、約220,000件のヒット。あまりにも数が違います。
変換で「お離婚」が登場する、うちのパソコン
これは昔のはなしです。
それでもって。
「ドリキャスのキーボード」が、どの程度の性能なのかは知りません。ですが、私のATOK12(古!)で変換してみると、
お離婚
が第一候補に…。
ということは、「ドリキャス」と大差ないということか?
いまだに「一太郎」と「ATOK」が活躍している私のパソコンは、やはり「前世紀の遺物」なのか?
…悲しい。
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