頭韻:2つ以上の単語の「頭」の音の位置を「そろえる」こと
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頭韻 とういん alliteration

『GUNSLINGER GIRL』1巻表紙(相田裕/メディアワークス 電撃コミックス)
  • GUNSLINGER GRL』 Vol.1
  • 『GUNSLINGER GIRL』1巻表紙
  • (相田裕/メディアワークス 電撃コミックス)
-『GUNSLINGER GIRL』1巻表紙(相田裕/メディアワークス 電撃コミックス)
  • 定義重要度4
  • 頭韻は、2つ以上の単語の「頭」の音の位置を「そろえる」ことをいいます。



とすると「頭韻」の説明は、それほど必要ないと思うかもしれません。

ですが実際はそれほど簡単ではありません。とても難しいです。

「頭韻」で「そろえる」というのは、次のようなことをいいます。ここにいう「決まられた位置」というのは、次の順序によって導きだされたルールによって割り当てられることになります。
  • (1)それぞれ単語に含まれている、「アクセント」がある音節を見つける
  • (2)その「アクセント」がある音節の中で、最初にある子音を調べる。
  • (3)このようにして出てきた子音が、2つ以上の単語で同じものとなっている。

…そういうことなのですが。

これは「英語」での「頭韻」のつくりかたを、おおざっぱに書いただけです。詳しくはこのページの下のほうに書いてあります。

このサイトでは、とりあえず「英語」で「頭韻」をつくるばあいのルールを書いていくことにします。なお、フランス語などでは、それぞれ「頭韻」をつくるための決まりが少しちがいます。その点は、ご注意ください。
  • 効果

  • 効果1音による規則性を生む

  • 「押韻」では、同じ音(または似た音)が規則的に出てきます。そのため「押韻」では、くり返された音よってリズム感を得ることができます。
  • キーワード:音調、音律

  • 効果2ハッキリしたリズム性が出る

  • 同じ音や似た音がくり返し出てきます。そのため、脈をうつような規則性のあるリズムが作られることになります
  • キーワード:規則性、規律、律動、はずみ、いきおい、流れ

  • 効果3同じ音をもった単語どうしにイメージをふくらませることができる

  • 同じ音をもっていることば。もしくは似た音をもっていることば。そういった「同じような音を持っている」ことばどうしに共通したものがあることを示すことができます。そして、そのことによって同じ音を持った単語の意味や性質といったことについて、イメージを広げていくことができます。
  • キーワード:連想、イマジネーション、察す

  • 効果4高揚していることを伝えることができる

  • キモチが引きしまっていたり、高まったりしていることをあらわします。
  • キーワード:高揚、奮起、意気込む、張り切る

  • 効果5場合によっては、ユーモラスな表現になる

  • 反復が、ときとしてユーモラスな表現を生むことがあります。ただしこれについては、いつでも当てはまるというものではありません。
  • キーワード:ユーモラス、コミカル、滑稽
  • 使い方
  • 使い方1同じ音か、もしくは似た音をもった単語をつかう

  • リズム感を出すために「同じ音」のことばを使います。もしくは、「同じ音」ではないけれども「よく似た音」をしていることばを用いることもあります。くわしくは、このページの下のほうをご覧下さい。
  • キーワード:音の反復、同音反復、畳音、韻を踏む、押韻
  • 使い方2くり返し、何度も同じ音が出るようにする

  • ことばの意味は違うけれど、「同じ音」(または「似た音」)をもったことば。そのようなことばを、くり返し何度も登場させます。
  • キーワード:反復、重なる、重ねる、くり返し、重複、ダブる
  • 注意

  • 注意1日本語では、「音数律」のほうが作りやすい

  • 日本語で「韻文」を作ろうとすると、「音数律」のほうが圧倒的に多くなります。つまり、「7音」や「5音」という音の数によってリズム感を出すほうが一般的です。

  • 注意2日本語は音の種類が少ないので、作るのは難しい

  • 日本語は、音の種類が少ないことばです。100+αくらいの数しかありません。そのため、「偶然に音が同じになってしまうこと」があります。

  • 注意3欧米のことばでは、「押韻」でリズム感を出すことができる

  • 反対に、欧米では。リズミカルにするために使われるのは「押韻」です。
  • キーワード:欧米語での韻文

  • 注意4うわすべりの「美辞麗句」になりやすい

  • カンタンに「文」という形を作り上げることができます。ですがそのようにしてできた文は、中身のない、うわすべりな文になりがちです。ですので、使いすぎは禁物です。
  • キーワード:美辞麗句、衒学的
  • 例文を見る)
  • 引用は、『GUNSLINGER GIRL』1巻表紙からです。でもって、ここで使われている
    • GUNSLINGER GIRL』

    というタイトルが「頭韻」だというわけです。

    念のため。これがホントに「頭韻」なのかどうか、ステップ1から順を追って見ていくことにします。
    ステップ1:「頭韻」ではないかとおもう単語の「アクセント」を調べる

    「GUNSLINGER」と「GIRL」という2つの単語について。それぞれアクセントを調べてみると、

    となっています。【ステップ2】から先に進んでいくためには、このことを確かめておいたほうが安全です。
    ステップ2:その「アクセント」が使われている「音節」をさがす

    つぎに。【ステップ1】で見つけた「アクセント」は、どの「音節」に含まれているのか。つまり、「アクセント」をもっている「音節」を探す必要があります。探しているときには、「1つの音節には母音が1つだけ」という「音節」のルールがあることを忘れないでおいてください。

    すると。

    となります。

    このように見ていくと。
    [GUNSLINGER]のうちアクセントのある[GUN]だけが、「アクセントのある音節」となることわ分かります。反対に言えば、[-SLING]と[-ER]の部分については「頭韻」になるかどうかの判断には影響してこない。そういうことを確かめることができます。
    ステップ3:その「音節」のなかで、最初に使われている「子音」に注目する

    これのステップ3については、迷わずに見つけることができると思います。ようするに、

    となります。この「アクセントのある音節のなかで、最初の子音になっているもの」。これが、「頭韻」なのかどうかを左右します。
    ステップ4:こうして見つけた「子音」が、それぞれの単語で同じがを検討する

    そういったわけなので。それぞれ見つけ出した「子音」を比べて見てみると、

    となります。つまり「頭韻」なのかどうかを判断する子音は、どちらとも/g/です。つまり、「子音が同じもの」になっています。

    以上のようなことから、結論として。この[GUNSLINGER GIRL]というフレーズは、「頭韻」に当てはまるということができます。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1日本語には「頭韻」はあるの?
  • ここまで書いてきたことは、すべて「英語」のなかで「頭韻」が成りたつかどうかというものです。それは逆に言うと、「日本語」であっても「頭韻」が成りたつかということには、ふれていないということです。

    ですが。「日本語」でも、「英語」と同じように「子音」を見つける「ステップ」が決まっているかというと、そうカンタンにはいきません。

    その「カンタンにはいかない」という理由としては、2つのものを指摘することができます。

    1つ目は、「アクセント」という用語が同じものではないという点です。

    つまり、「英語のアクセント」と「日本語のアクセント」というのは、同じものではないのです。くわしく書くと、「英語のアクセント」というのは、「いきおいよく、強く言う」ところのことをいいます。ですが「日本語のアクセント」というおんは、「高い音を出して言う」ところのことをいうのです。

    そういった関係で。同じ「アクセント」という用語を使ったとしても、「英語」と「日本語」とでは違うものなのです。

    そのため。この食い違いをどのように処理するかというのが、1つ目の問題点となります。

    また。理由の2つ目は、やたらと「日本語の音節」が短い、ということです。たとえば[GUNSLINGER GIRL]という単語は、3つの音節で成りたっています。[GUN]+[SLINGER]+[GIRL]の3つです。

    ところが。日本語で「ガンスリンガー ガール」といったばあい。これを音節に分けると、「ガ・ン・ス・リ・ン・ガ・ー・ガ・ー・ル」という10コも音節があることになってしまうのです。

    そして、このことと関連して。「日本語」は、「音節の種類」がとても少ないのです。言いかえれば、細かい音節をたくさん積み重ねてことばをつくる、それが「日本語」の特徴なのです。

    したがって。このあたりを、うまく説明できる方法を考えないと、日本語での「頭韻」をうまく説明することはできなくなります。

  • 深く知る2それを踏まえて、日本語での「頭韻」を考えてみる
  • 上に書いていたとおり
    日本語ということばのなかで、「頭韻」というものはどういったものか。そういったことは、いろんな説が考え出されています。

    ですので。いろいろある説のうち、いくつかを紹介しておきます。

  • 深く知るa日本語では「頭韻」というものはない
  • まず、日本語には「頭韻」はないとする説。つまり、頭韻がある「英語」のような言語と大きく離れている「日本語」には、そもそも「頭韻」という用語を当てはめることができないとする考えかたもあります。

    ですがこの説には、このサイトでは採用しません。

    たしかに厳密に考えれば、「日本語」では「頭韻」を作ることができないとするのは理解できるものです。けれども、あっさりと「日本語には頭韻はない」としてしまうのは、かなり消極的な、保守的なものだと言わざるをえないからです。

  • 深く知るb日本語では、「音素」が一致していれば「頭韻」だとする説
  • つぎに、2番目の説では。

    「頭韻」だといえるためには。いちばん最初の単語のもっている「音素」が、同じになっていることだけを条件にします。

    逆にいえば、「アクセント」については考えに入れないということです。「アクセントがあるかどうか」という点を、「日本語」では無視するという考えかたです。

    このような考えかたをする理由。それは、つぎのようなものです。
    どうして、日本語では「頭韻」がカンタンに作れないのか。それは、ヨーロッパの言語では考えることのできる「頭韻」が、日本語にはピッタリ当てはまらないからだ。それではなぜ、ヨーロッパの言語にある「頭韻」が、日本語ではシックリこないか。それは、「アクセント」の置きかたが、まったく違うからだ。

    ヨーロッパの言語にあるはずの「頭韻」が、日本語にはストレートに当てはまらない原因。つまりトラブルを起こしているのは、「アクセント」という部分にある。

    じゃあ。
    「頭韻」を考えるときには、「アクセント」については無視しよう。日本語で「頭韻」というものを考えようとするときに、トラブルを起こしているのは「アクセント」だ。それなら、日本語ので「頭韻」をあつかうときには、「アクセント」にかんしては条件からハズしておこう

    そういったわけで。

    日本語は、さいしょの「音素」がそろっていれば「頭韻」になる。これは、そのような考えかたです。

    ヨーロッパの言語では「頭韻」の条件となる「アクセントがあるかどうか」という点を、「日本語」では無視するという考えかたです。

  • 深く知るc日本語では、「音素」が一致していれば「頭韻」だとする説

  • この説で考えると、例えば、
    「スカッとさわやかコカコーラ」
    のような広告は「頭韻」ということができます。
    • カッと わやか ←S音の反復
    • か・ーラ ←k音の反復

    といったふうに。そこには、2つの「頭韻」を見つけることができます。

    ですが。この説を日本語に当てはまると。大きな問題が1つ出てきます。それは、あんまり目立たないので、「頭韻」だと気がついてもらえるかが難しいという点です。なんでかというと、日本語には「子音」の種類が少ないのです。そのため、「最初の子音が、たまたま偶然に同じだった」ということが、十分にありえることなのです。

    ですので。この説を選んだばあいには、かなり多くの「子音」をそろえることが必要となってきます。たとえば、
    • さかたの かりのどけき るの日に
    • しづ心なく なのちるらむ(紀友則)

という和歌のように、しつこいほど同じ「子音」を出してくる必要があります。この和歌では、子音/h/が4回も反復しています。これくらい反復してくれないと、「頭韻」と受けとるのは難しいものがあります。
  • 深く知るd日本語では、「はじめの子音+母音」が一致していれば「頭韻」だとする説
  • いろいろ調べてみた中では、この説がいちばん受け入れられていると思います。

    つまり。
    さいしょの[子音+母音]が同じならば、「頭韻」だといえる
    とする考えかたをするものです。言語学のほうでは、この[子音+母音]のことを「モーラ(拍)」と呼んだりします。ですので、いいかえれば
    さいしょの「モーラ(拍)」が同じならば、「頭韻」だといえる
    ということになります。
    「頭韻」については、この説明をする本がいちばん多いといえます。

    でも。
    どうして多くの本で、この「さいしょのモーラ(拍)が同じならば、頭韻といえる」と解説する本がおおいのか。その理由は、
    「モーラ(拍)が同じ」ならば、「ひらがな・カタカナで書いたばあいに同じ文字が来る」

    という原則を、「日本語」が持っているからです。このことを根拠とする書物は、かなりたくさん見つかりました。

    この説を支持すると、「頭韻」がといえるもの。その例としては、
    • せばなる
    • さねばならぬ
    • にごとも
    • らぬはひとの
    • さぬなりけり
    (上杉鷹山)

    といたものがあげられます。「ひらがな」で書けば「先頭に同じ文字が、くり返し出てくる」ということが分かります。

    なお。
    このように、「同じ文字が来るから」という理由を、あまり大きく見ない立場もあります。

    「モーラ(拍)」が一致するというところに、「音の一致」を感じとる。そうやって感じとった「音の一致」というものが、「頭韻」を生みだす。このような考えかたもあります。

    たしかに日本語の「頭韻」では、「文字」が一致する。でも「文字」が一致するというのは、あくまで、「モーラ(拍)」が同じときには「文字」も同じになるという、日本語の「文字」のしくみがあったからにすぎない。
    つまり、
    「モーラ(拍)」が一致→「頭韻」として感じとる・「文字」が同じになる
    なのであって、
    ×「文字」が一致 →「頭韻」として感じとる・「モーラ(拍)」が同じになる
    ではない。
    そういうことです。

    この考えかたにそえば。
    日本語で、「頭韻」を考えるときに、そのいちばん根っこにくるのは「モーラ(拍)」だということになります。このように、日本語の音に対する感覚から「頭韻」の本質を考えていくことも大いに考えることができます。

    こちらの考えかたについては、『ネーミングの言語学-ハリー・ポッターからドラゴンボールまで-〈開拓社 言語・文化選書8〉』(窪薗晴夫/開拓社)が、とても参考になります。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 頭韻・頭韻法
  • 参考資料
  • ●『シェイクスピアのレトリック』(梅田倍男/英宝社)
  • この本は、「英語」での「頭韻」について、くわしく説明されている本です。ただし、「日本語」での「頭韻」については書かれていません。また例文が英文(シェイクスピア)のものです。なので、私(サイト作成者)は読んでいくのに時間がかかりました。この本がオススメなのかどうかは、読む人がどれくらい英語力をもっているのかによって左右されると思います。
  • ●『ネーミングの言語学-ハリー・ポッターからドラゴンボールまで-〈開拓社 言語・文化選書8〉』(窪薗晴夫/開拓社)
  • この本については、上のほうでもふれましたが。日本語のばあい、どのような条件が満たされていれば「頭韻」と思うようなことばになるか。そういったことを、音声学のほうから書かれているのが、この本です。一般向けに書かれている本なので、言語学とか音声学なんかほとんど知らない人でも、予備的な知識なしに読むことができるようになっています。

    同じ著者の本で、『語形成と音韻構造〈日英語対照研究シリーズ(3)〉』(窪薗晴夫[著]、柴谷方良・西光義弘・影山太郎[編]/くろしお出版)などもあります。ですが、こちらなどは学術書の色合いが強いので、ちょっとレベルが高いように思います。
  • 余談

  • 余談1「ガンスリンガー」の意味
  • ちなみに

    「GUNSLINGER」という単語。みなさん、この単語の意味を知っているでしょうか?
    • GUNSLINGER [名](銃器所持の)殺し屋
だそうです。私は、あまり英語が得意でないので、この単語を辞書で引いて調べてしまいましたよ。

それはともかく。
ヘンリエッタ萌え〜。