抹消表示:見える形で削除する
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関連レトリック抹消表示

抹消表示 まっしょうひょうじ deleted representation

『まほらば』2巻88ページ(小島あきら/エニックスGANGAN WING COMICS)
  • 白鳥(二人の行く末を
  • 陰ながら
  • たのしく
  • 見守ろうと
  • 決意したのでした。)
-『まほらば』2巻88ページ(小島あきら/エニックスGANGAN WING COMICS)
  • 定義重要度1
  • 抹消表示は、とは、もとの文字が消してあるものです。つまり、
    こんなかんじ
    のものです。消してあっても、元の文字が分かる。それが、この技法のミソです。

  • 効果

  • 効果1消したはずの内容が、そのまま分かる

  • 消したはずの内容が、そのままそっくり分かる。それでいて、形式としては削除している。これが「抹消表示」の重要なポイントです。
  • キーワード:抹消、消去、取り去る、除く、取りのぞく、除却、表示、明示、顕示

  • 効果2実際には、強調としてはたらく

  • 形式としては消してあるのに、実際にはその部分に注目が集めることになります。そのため、伝えられる情報が豊かになると同時に、その部分を強調させることになります。
  • キーワード:強調、強い、強まる、強める、強化、増強
  • 使い方
  • 使い方1注目してもらいたい部分を、見せ消ちにする

  • まず「見せ消ち」の要領で、書かれている文字の上から線を引く。でも、線を引かれる前の文字を読みとることができる。これを利用して、その消された文字の部分に読み手の注目が集まるようにします。
  • キーワード:注目、目をつける、目に留める、着目、着眼、注視、目を注ぐ、目を配る
  • 例文を見る)
  • 引用は『まほらば』2巻から。

    主人公は、白鳥という男の子。

    白鳥は上京して、寮に住むことになる。しかし、そこの「梢」という名前の大家さんが変わり者。ふだんは、やさしく礼儀正しい女の子。だけれども、多重人格の持ち主で、ふとしたことで人格が入れ代わってしまう。そのため、一筋縄な生活にはならない。

    そんな白鳥の行く末を思った、同じ寮に住む「桃乃」と「珠実」ご両人の感想。それが、抹消表示になっています。

    つまり本心は、「たのしく」見守って行きたいわけですね。でも、表面上はそれを隠して、「たのしく」というように書かれているわけです。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1ちょっと変わった抹消表示
  • 『会長はメイド様!』3巻136ページ(藤原ヒロ/白泉社 花とゆめコミックス)
    • 碓氷「どーも碓氷拓海です[li]]えー この話の紹介… ……とりあえず
    • 主人公・鮎沢美咲が
    • 生徒会長をやりつつ
    • メイド姿になって 男達に
    • ピ――――   ピ――――
    • 〇〇〇△△△
    • 誘惑をしてメロメロに…」
    • 美咲「叩きのめす痛快アクション
    • コメディです」
    • 碓氷「いや ラブロマンス」
    • 美咲「努力と根性の 生徒会スポ根です」
    • 碓氷「いや エロ萌え」


  • 引用は、『会長はメイド様!』3巻136ページ(藤原ヒロ/白泉社 花とゆめコミックス)。


    • ちょっとかわった「抹消表示」として、次のものをあげておきます。

      右の画像は、『会長はメイド様!』3巻から。連載が始まったときに描かれた、予告マンガということです。

      そういった事情もあるので、登場人物などの説明は省略することにします。

      レトリックとして問題になるのは、
      • 碓氷「メイド姿になって 男達に
      • ピ――――   ピ――――
      • 〇〇〇△△△
      • 誘惑をしてメロメロに…」

      の部分。

      ここでは、〇〇〇や△△△といった記号を使っています。これは、伏せ字だといえます。伏せ字を使っているので、ダイレクトには意味を読みとることができません。

      これをさらに、「抹消表示」によって打ち消すしています。こういったことをしても、少なくとも伝えることのできる情報は、なにもありません(すでに、伏せ字によって隠されてしまっているから)。

      けれども、これも一応は「抹消表示」です。そういったわけで、このページで扱うことにしました。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 抹消表示
  • 呼び方3
  • 見せ消ち
  • 別の意味で使われるとき
  • ●「見せ消ち」の本来の意味
  • 「見せ消ち」とは、むかし「写本」などをするときに使われたものです。印刷機ができるまで人々は、同じ内容の本を作るときには手書きで写すしかありませんでした。手書きとはいっても、鉛筆で書いたわけではありません。筆です。そのため当然、消しゴムはありません。そこで「私はこのように書きましたけれども、それは間違いです」という意味あいで、抹消した文字を読めるようにしました。これが「見せ消ち」です。
  • 参考資料
  • ●『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)
  • 「抹消表示」について、かなり長く説明してあります。例もあがっているので、読みやすいと思います。
  • ●『国語学大辞典』(国語学会[編]/東京堂出版)
  • 「見せ消ち」の説明については、こちらを中心にして書きました。