接離法:句読点をつける場所を、変える
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接離法 せつりほう disjunctive

『美!!』1巻159ージ(織田綺/小学館 少コミフラワーコミックス)
  • 陽「なんだよー
  • 逃げるなよー
  • 俺は『三蔵法師』に
  • 負け犬」
  • むっちゃん「誰がだ!!」
  • 陽「逃げたくもなるかな?
  • むっちゃん僕に勝ったことないもんねえ
  • 幼稚園のオモチャの取り合い
  • から始まって運動会のリレー学年
  • のアイドルななこちゃんとの仲
  • みよこちゃんとゆりかちゃんもか
  • 絵画コンクール弁論大会読書感想
  • 発表の賞カンケイ多数テストは
  • すべて学年トップ独走だし陸上
  • 競技水泳武道その他スポーツもただ
  • の一度もキミには負けたことないし
  • かろうじて素もぐりでキミが勝ちそ
  • うになったけど僕の卑怯な手にまん
  • まとはまって負けちゃってあーほ
  • んとに数え上げたらキリがないけ
  • ど数えてあげようか?
  • むっちゃん「いちいち覚えてんじゃ
  • ねえよ!!」
-『美!!』1巻159ージ(織田綺/小学館 少コミフラワーコミックス)
  • 定義重要度2
  • 接離法は、句読点(「、」や「。」)をつける場所を、変えるというものです。つまり、いろいろな効果を狙って、文法の上ではルールとなっている文の切り方を変えるものです。

  • 効果

  • 効果1口調をよくする

  • 文を読んでいるときに、句読点(「。」や「、」)がある。すると、息つぎなどで間をあけるはずです。このように間をあけることで口調をよくするのが、この「接離法」です。
  • キーワード:口調、歯切れ、語呂、調子、語調、リズム、音律、旋律、リズミカル、テンポ、音調

  • 効果2イレギュラーな場所に句読点があるため、その部分に注意を引かれる

  • ふだんとは違う句読点があることによって、その部分に注意を引かれることになります。これは、どのくらい平均から離れれば「接離法」になるかについては、断定は難しいものがあります。結局、あるていど日本語の文章を読み書きした人が違和感を覚るばあい。そんなときには「接離法」といってかまわないと思います。
  • キーワード:注意を引く、興味、関心、目を止める、注目
  • 使い方
  • 使い方1句読点を使って、ふつうならば切らないところを切る

  • 句読点を使って、ふつうならば切らないところを切る
  • 「接離法」のパターン1。句読点を使って、ふつうならば切らないところを切るのが「接離法」になります。
  • 使い方2ふつうならば切るところを、句読点で切らない

  • 「接離法」のパターン2。ふつうならば句読点を使って切るところを、切らない。これも「接離法」となります。
  • 例文を見る)
  • 例文は『美!!』1巻から。

    主人公は、竹林真という女の子。…なのだけれども、引用したシーンには登場していません。なので、真についての説明は省略します。

    ここでメインとなっているのは、むっちゃんと陸。ちなみに彼ら2人は、主人公の真と同じ「美研」なる部に所属している。そして同時に、むっちゃんと陸は兄弟でもある。

    で。
    ここで話題となっているのは、「むっちゃんは、いつも陸に負けてばっかりで、すぐ逃げる」というようなこと。
    なんでこんな話になっているのかというと。実は、むっちゃんと陸は、真をめぐって三角関係(?)となっている。ほんとうは、ちょっと違うのだけれども、ここでは踏みこんで説明はしません。

    そいでもって。陸が言うには、いつも自分はむっちゃんに勝っている。その例となるようなエピソードを、これでもかというほど並べているのが引用のシーン。

    たしかに、「あれもこれも」と並べることについては、「 敷衍」というレトリックになります。だけれども今回のは、「接離法」として引用をしました。

    このシーンを「接離法」として引用したという理由。それは、どうみても「スペース(空白)」が足りない。ひたすら、ふつうの文字だけが並んでいるからです。

    ためしに、もしも句読点(「、」「。」)をつけたら、こんな感じの文章になります。

    • 幼稚園のオモチャの取り合いから始まって、運動会のリレー学年のアイドル、ななこちゃんとの仲。
    • みよこちゃんと、ゆりかちゃんもか。
    • 絵画コンクール、弁論大会、読書感想発表の賞カンケイ、多数テストはすべて学年トップ独走だし、陸上競技、水泳競技武道、その他スポーツもただの一度もキミには負けたことないし。

    • かろうじて、素もぐりでキミが勝ちそうになったけど、僕の卑怯な手にまんまとはまって負けちゃって。

    • あー、ほんとに数え上げたらキリがないけど、数えてあげようか?
    これと比べてみれば。引用したセリフは、文字だけがありすぎることが分かります。

    このように、スペース(空白)が少なすぎることによって「文の区切れが足りない」なもの。こういったものを、このページでは「接離法」として紹介しておきます。

    なお。
    引用したセリフは、いくつか「改行」しているところに変なところもあります。

    たとえば、
    • ・・・あーほ
    • んとに・・・

    というところ。「ほんと」ということばが「改行」によって、「ほ」と「んと」の2つに分けられてしまっています。これは大きく考えれば、不自然な場所で区切られているといえます。ですので、このあたりも「接離法」と見てもよいかもしれません。
  • 例文を見るその2)
  • 『けんぷファー』1巻92ページ([原作]築地俊彦・[キャラクター原案]せんむ・[作画]橘由宇/メディアファクトリー MJコミックスアライブ)
    • 西乃「先輩!!」
    • 生徒会室に行くにはどうしたら
    • いいでしょうか?
    • 届け物があるんですけど
    • 私場所がわからなくて
    • 私まだこの学院のこと
    • よくわかってないんで詳しい先輩に教えて
    • ほしいと思ってるんですが
    • 先輩みたいな格好いい人に
    • 案内してもあれると
    • すごく嬉しいんですけど
    • ナツル「いや…他の人にきいたほうが」




    すぐ右に引用した画像は、『けんぷファー』1巻から。

    話の設定は、とりあえず無視。このシーンのうち、「接離法」に関するところを書いておきます。

    ナツルは校舎を歩いている。そのとき、一人の生徒と出会う。あとで「西乃ますみ」という名前だとわかる。

    その西乃は、ナツルに生徒会室へ案内してほしいと言う。

    だが、そんなふうに生徒会室のことを知りたかったのかとおもいきや。話は、なぜかナツル自身のことに及んでいく。
    • 先輩みたいな格好いい人に
    • 案内してもあれると
    • すごく嬉しいんですけど

    生徒会室に案内してもらうのに、格好いいかどうかは関係がないはず。

    まあ、それはさておき。「接離法」にあたるのは、西乃のセリフにあたります。つぎからつぎへと、まくしたてる西乃。これが「接離法」です。

    マンガでは、こんなふうに「接離法」を使っているのを、ときどき見かけます。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1コミックスでの「接離法」
  • 「接離法」は、具体的には、

    • 句読点(「、」「。」)がいらないところで、で句読点(「、」「。」)を打つ
    • 句読点(「、」「。」)がいるところで、句読点(「、」「。」)を打たない

    のどちらかにあてはまるものです。こういったものが、「接離法」となります。

    …なのですが。
    コミックスでは、ふつうは句読点(「、」「。」)を使いません。ナゼか、小学館のコミックスにだけは、ふき出しに句読点(「、」「。」)が出てきます。ですが、ほかの出版社のコミックスには句読点(「、」「。」)が書かれません。

    というわけで。
    コミックスでの「接離法」は、

    • スペース(文字と文字のあいだの空白)が、やたらと少ない

    というパターンになると思います。

    つまり。
    コミックスでは、どうしても1行のうちで区切りをつけたいときには、スペース(文字と文字のあいだの空白)を空けます。それは読点「、」ではないけれども、実際のところはスペース(空白)によって文に区切りをつけています。

    ですので、そのスペース(空白)が足りないということであれば、「接離法」といえるのではないかと思います。そういったわけで、このページではそのようなスペース(空白)が足りないタイプのものを、「接離法」として紹介してみることにします。

  • 深く知る2「句読点」を打つ意義
  • 句読点(「、」や「。」)を打つ意義は、大きく言って3つあります。

  • 深く知るa区切るため
  • たとえば

    • 「すもももももももものうち」

    という文は、「 早口ことば」としては有名だけれども、これではどうしても読みづらい。

    • 「すももも、ももも、もものうち」

    くらいの「、」を打たなければ、意味をつかみ取るのは難しい。これが「くぎる」という効果です。

  • 深く知るb2通りに読める文をはっきりさせるため
  • たとえば

    • 「ここではきものをぬいでください」

    は、2通りの読みかたができる。やはり、

    • 「ここで、はきものをぬいでください」
    • 「ここでは、きものをぬいでください」

    と、「、」を打って、1つの意味にしかとらえられないようにするべきだと思われます。これが、「2通りに読める文をはっきりさせる」ということです。

  • 深く知るc文法ではなく、修辞的な要素をもった句読点
  • これが、このページで扱っている「句読点の打ちかた」です。外山滋比古氏の言葉を借りれば、

    • 読まれるときの調子、抑揚などを示す句読法

    という効果をあげているものです(外山滋比古氏は「句読法」と書いていますが、「接離法」とほぼ同じものといえます)。

    この3つ目の、「修辞的な要素をもった句読点」。これが、このページで扱っている「接離法」の句読点です。

  • 深く知る3「句読点」のあいまいさ
  • この「接離法」、つまり「、」「。」の使いかたには、2つの大きなハードルがあります。

    まず1つ目は、『国語学大辞典』(国語学会/東京堂出版)が「句読点」について述べている部分から分かります。つまり『国語学大辞典』の「、」や「。」についての説明を一言でいえば、
    日本語では、文法上「、」や「。」を付けるか付けないか、厳密には決まっていない

    とのことになるのです。つまり、

    • 文法上、絶対に「、」「。」が必要になるところ
    • 文法上、絶対に「、」「。」が不必要なところ

    というところを断定するのは、とても難しいということです。ですので、明らかに「接離法」に当たるといえるものは、ほとんどありません。

    問題点の2つ目。それは、
    マンガで句点「。」を使うということは、ほとんどない

    ということです。ナゼか、「小学館」から出版されているマンガには句点「。」がついている。だけれど、他の出版社のものには句点「。」がついていないのです。

    このような2つの理由があるので、例文があまり「接離法」らしくないのは勘弁して下さい。

  • 深く知る4「句読点」についての補足
  • コミックスの「タイトル」のうちで、「接離法」の感触のあるものが1つあります。それは、『「すき。だからすき」』(CLAMP/角川書店 あすかコミックス)です。

    なんでまた、「タイトル」の途中に句点「。」の文字があるのでしょうか。文の最後には句点「。」はついていないのに。

  • 深く知る5「句読点」と「弁慶読み」との関連
  • 「弁慶読み」という「 ことば遊び」があります。この「弁慶読み」というのは、読点「、」が意図しないところに打たれたことによって、変な読みかたが生まれるというものです。

    有名なものでは、
    • 今日麩の味噌汁 (=きょう、ふのみそしる)
    •   ↓
    • 恐怖の味噌汁 (=きょうふの、みそしる)

    といったものがあります。まあ、いまのところ「弁慶読み」のページは作っていないけれど。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 接離法
  • 呼び方4
  • 句読法
  • 参考資料
  • ●『日本の修辞学』(外山滋比古/みすず書房)
  • この本の第7章にある「修辞的句読」という章が、句読点を丁寧に説明しています。外山滋比古氏は英文学者です。なので、この本の解説をレトリックの目から見ると、少し方向性の違う感じを受けます。ですが、役に立つ本多だといえます。
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