幼児語:十分に使いこなすことのできない子供が話す言葉
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幼児語 ようじご nursery language

『パパの言うことを聞きなさい!』1巻12ページ([原作]松智洋・[漫画]竹村洋平/集英社 ジャンプ・コミックス)
  • ひな「おいたーん
  • 祐太「えっ」
  • ひな「あいすたべう
  • あいすぅーっ!!
-『パパの言うことを聞きなさい!』1巻12ページ([原作]松智洋・[漫画]竹村洋平/集英社 ジャンプ・コミックス)
  • 定義重要度1
  • 幼児語は、まだ言葉が十分に使いこなすことのできないあいだ、子供が話す言葉です。

  • 効果

  • 効果1ことばの使い手が、子供であることをあらわす

  • 子供はしばしば、「幼児語」にあてはまるような言い間違いをすることがあります。これは、子供のうちはまだ、言葉を話すのに使われる部分の発達が完成していないためです。そのため、「幼児語」のような発音になってしまいがちということになるのです。このことから、「幼児語」を使って話している人は、幼い子供であることも多くあります。
  • キーワード:幼い、いとけない、幼少、幼稚、子供、子供じみた、児童、幼児

  • 効果2発音をカンタンにすることで、幼児が話しているフンイキを出す

  • 小さい子供は、大人と同じようには発音できません。それは、すぐ上にも書きましたが、言葉を話すのに使われる部分の発達が完成していないためです。そこで、発音がカンタンになるように発音を変える。その結果、「幼児語」のような発音になってしまうというわけです。
  • キーワード:(発音を)カンタンにする、容易に、なめらかに、スムーズ、手軽に、単純に
  • 使い方
  • 使い方1擬音語や擬態語といったオノマトペをを使う

  • たとえば、「ワンワン(犬)」という「幼児語」があります。これは、ほえる犬のようすを写しとって「ワンワン」になったものです。ですので、擬音語を使った「幼児語」だといえます。
  • キーワード:擬音語、擬声語、声喩・オノマトペ、感覚的、悟る、感じ、イメージ、概念、観念
  • 使い方2子どもが使いやすい音を組み合わせる

  • 「マンマ」のような、子どもためにある独特なことば。それを使うのが、こちらとなります。
  • キーワード:言いかえ、換言
  • 使い方3音のくり返し・反復をする

  • このに当てはまるものは、たくさんあります。「ブーブー(車)」とか「モーモー(牛)」とか、「幼児語」のなかで、いちばん数が多いパターンではないかと思います。たとえば、にあげた「ワンワン(犬)」のばあい、このにも当てはまります。
  • キーワード:同音反復、音反復、くり返し、反復
  • 使い方4音を削除することによって、ことばを短くする

  • 大人ならば発音されるはずの、ことばの音。その一部分を切り取るように短くするものが、これにあたります。「あれ」を「あえ」という発音して「r」の音を削除したりするのが、これにあたります。レトリック用語でいう「 語頭音消失」「 語中音消失」「 語尾音消失」が、これに該当します。
  • キーワード:語頭音消失、語中音消失、語尾音消失
  • 使い方5音を別のものに置きかえる

  • たとえば「ライオン」を「ダイオン」とする、つまり、「ラ」の代わりに「ダ」を発音する。これは、子音の/r/を/d/に置きかえたものなので、こちらの例になります。レトリック用語では、「音字換入」といいます。
  • キーワード:音字換入、差しかえる、切りかえる
  • 使い方61つの単語の中で、2つの音が互いに位置を取りかえる

  • 1つの単語の中にある、2つの音。その音どうしをお互い入れ替えるというのが、この「音位転換」です。例としては、「しおひがり(潮干狩り)」を「ひおしがり」と言って、「し/shi/」と「ひ/hi/」を置きかえてしまうようなものが、こちらにあたります。
  • キーワード:音字転換、入れ替え、替える、交替、取りかえ、チェンジ、置きかえる
  • 使い方7新しい音を、ことばに差し入れる

  • もともとなかった発音を、新しく組み込む。そのことで新しいことばを作りだすのが、こちらとなります。レトリック用語でいうところの「音字添加(語頭音添加、 語中音添加、語尾音添加)」に該当します。
  • キーワード:語頭音添加、語中音添加、語尾音添加
  • 注意

  • 注意1「幼児語」を使う場面は、かなり少ない

  • 「幼児語」で話していることになるシーンは、かなり限られてきます。いい歳したオジさんに「幼児語」で話しかけるようなことは、ふつうありません。(ケンカを売っているときくらいしか、考えられない)
  • 例文を見る)
  • 引用は、『パパの言うことを聞きなさい!』1巻からです。

    主人公は、瀬川祐太(せがわゆうた)。大学1年生。アパートでひとり暮らし。そんな彼はいま、3人の姉妹と暮らすことになっていた。その事情を書くと長くなるのは目に見えているので、省略します。

    で、(祐太が借りたひとり暮らし用の)アパートに、祐太といっしょに3人姉妹が暮らすことになった。その3人姉妹の末っ子が、引用したシーンで登場している女の子。小鳥遊ひな(たかなしひな)。保育園児。

    ひなは、祐太から見て姉・祐理(ゆり)の子にあたります。つまり「姪」ということです。べつのいいかたをすると祐太は、ひなから見て母の弟になります。「叔父」です。

    さて、ここらへんから「幼児語」に関連することになります。引用した場面で、ひなは「幼児語」で話しています。
    • おいたーん
    • あいすたべう
    • あいすぅーっ!!
    この、ひなのセリフが「幼児語」を含んでいるということになります。そこで、ひなの発音(つまり「幼児語」発音)と一般的な発音とをの違いを見くらべてみます。
     ひなの発音一般的な発音
    (1)おいたーん>おじさーん
    (2)あいすたべうあいすた
    (ひなが「おいたーん(=叔父さん)」と言っているのは、ひなにとって祐太が「叔父」に当たるからです。)

    「じさ→いた」「 語頭音消失」z音とt音の消失、「る→う」「 語頭音消失」r音の消失、に当たります。そういったわけで、ひなのセリフは「幼児語」ということになります。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1時代の流れによることばの変化と「幼児語」との関連
  • 生まれた子どもが、ことばを使うことができるようになる過程。言いかえれば、「幼児語」を使う幼い子どもが、ことばを習得するまでの過程。

    それは、人類がことばを習得してきた流れに似ているとされます。一方で人類は、時代の流れに乗って変化させていく。他方、ひとりの人間が年齢に応じて習得していく。この2つには、多くの関係があるとされます。

    たしかに上の2つは、完全にピッタリ合うものではありません。ですが、人類がことばを変化することと、ひとりの人間がことばを習得すること。この2つのあいだには、対応する点があるとされます。

  • 深く知る2子どもがことばを使えるようになる年齢
  • 子どもは成長していく中で、だんだんと話すことができるようになります。そこで、子どもの年齢が何歳のときには、どれくらい言葉を使うことができるか。これについて、見ていくことにします。

    おおまかにいって次のように分けることができます。

  • 深く知るa叫び・わめき[誕生~生後6週間くらい]
  • この段階では、意味のある言葉を話すことはありません。単純な叫び声をあげているだけです。

  • 深く知るb喃語(なんご)[生後7週間~1年くらい]
  • この期間にあたる子どもは、いちおう、しゃべります。ですが、何かを指し示すような言葉を使うわけではりません。たとえば「バブバブ」というのは、たしかに何かをしゃべっています。ですが、そのことばで何かをあらわそうとしているわけではありません。

  • 深く知るc幼児語(前期)[生後1年~2年くらい]
  • ここでは、片言のことばを話すようになります。つまり、「意味のある」言葉を話しはじめます。「赤ちゃんことば」といわれるものが、この「幼児語」に当たります。「ブーブー(車)」や「ワンワン(犬)」などが、こちらにあたります。1つの単語だけを、口にします。

  • 深く知るd幼児語(後期)[生後2年くらい~]
  • 2歳くらいからは、2つ以上の単語をつなげて話しだします。「ワンワン ネンネ」のようなものが、例となります。1つの文として完成するように、2個以上の単語を組み合わせることができるようになるのが、このころです。ここからは、「文」を学んでいくことになります。

  • 深く知る3おおまかに見てきて
  • 移りかわりは「おおまか」です。分類のしかたは、ほかにもいろいろあります。また赤ちゃんにだって、それぞれ違いがあります。それに、きのうまで「喃語」だったのに今日から「幼児語」をしゃべると言ったものでもありません。ですので「おおまか」です。

    このような、年齢に応じたことばの特徴。これは、日本語だけあてはまるものではありません。外国語の場合であっても、同じことが当てはまります。

  • 深く知る4子どもに「幼児語」を教えるべきか?
  • 子どもに「幼児語」を教えるべきか?、ということが議論となることがあります。

    教えるべきではないという考えかた。これは要するに、二度手間だということです。たとえば「犬」のばあい、いちど子どもは「ワンワン」を覚えたあと、もういちど「犬」を覚えることになる。それは面倒だということです。

    これに対して、教えるべきだという考えかた。こちらでは、「幼児語」は自転車の補助輪のようなものだと考えるわけです。自転車が乗れるようになるときには、まず補助輪をつけて練習する。そうしてから、補助輪なしで自転車を走らせることができるようになる。補助輪なしでも問題なくなれば、もう補助輪は必要ない。

    それと同じように、いったんは言葉を学びとるためには「幼児語」という「補助輪」が必要となる。言いかえれば「幼児語」がイラナイと考えるのは、「補助輪」を使う段階を飛びこえて、いきなり自転車に乗れといっていうのと同じだ、というわけです。

    このサイトでは、どちらかに与するということはありません。だいたいレトリックをやっている人が口を出すようなタイプのものではありません。ただ、そういった議論があるということは書きそえておきます。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 幼児語
  • 呼び方3
  • 小児語
  • 呼び方1
  • 小児言語
  • 参考資料
  • ●『日本語解釈活用事典』(渡辺富美雄・村石昭三・加部佐助[共編著]/ぎょうせい)
  • タイトルを一見すると、この本はあまりレトリックとは関係がなさそうに考えるかもしれません。ですが実はこの本は、いろいろなレトリック用語を説明してあります。幅広いレトリック用語の解説が書かれているので、このサイトを作るときにも役にたっています。