
- 宮野「絶対に自分の部屋のみで
- 見てくださいね あと外で
- 袋から取り出したりしないで
- くださいね 劇物だと思って
- 扱ってくださいね あと俺は
- こういう話を読むのが好きな
- だけであって俺自身はそうじゃないけど
- 別にそれを否定するつもりは
- ないっていうかむしろ」
-『佐々木と宮野』1巻14ページ(春園ショウ/角川書店 MFCジーンピクシブ)- 列叙法は、ことばをつぎつぎと並べて、積み重ねるレトリックです。つまり、さまざまな言葉や観念を畳みかけることをいいます。
 かなり幅がある かなり幅がある
- 「列叙法」の効果については、使いかたによってかなりの幅があります。けれども、「列叙法」に含まれるレトリックのうち、どのレトリックに当てはまるかによって、ある程度しぼることができます。
 
 ですので。
 くわしくは、「列叙法」に含まれるレトリックの、それぞれの項目をご覧ください。
 
 ●列叙法に含まれるレトリック●
 列挙法、
敷衍、物尽くし(類装法)、花尽くし、揃物、
漸層法(広義の)、
漸層法(狭義の)、
漸降法、連鎖漸層法、
飛移法、
頓降法。
 まとめることなく、同じようなことばを並べたてる まとめることなく、同じようなことばを並べたてる
- 同じようなことば、似たような考えかたを並べること。それが「列叙法」です。
 :並べたてる、並べる、列挙、枚挙 :並べたてる、並べる、列挙、枚挙
 さまざまな観念やことばをくり返して積みかさね、ある上位のコトをあらわす さまざまな観念やことばをくり返して積みかさね、ある上位のコトをあらわす
- 「列叙法」では、さまざまなフレーズを重ねていくことになります。そしてその結果としては、ある1つのことをあらわすことになります。逆にいえば。まとめれば1語にすることができそうなことを、あれこれと単語を連ねて表現するというものです。
 :くり返す、重ねる、重なる、たび重なる、反復、重複、積みあげる、積もる、堆積、集積、累積、山積み、山積、重ね重ね、重なりあう :くり返す、重ねる、重なる、たび重なる、反復、重複、積みあげる、積もる、堆積、集積、累積、山積み、山積、重ね重ね、重なりあう
 あふれかえるように、色々なことばをくり出す あふれかえるように、色々なことばをくり出す
- ふつう「列叙法」というのは、必要ないと思われるほどにバラエティーあふれる表現を挙げていくものをいいます。ですので、そういった言葉づかいから圧倒されるような感覚を得ることにもなります。
 :くり出す、あふれ出る、あふれ出す、あふれる、こぼれる、吹きこぼれる、流れ出る、流れ出す、湧く、湧き出る、湧き出す、噴き出る、噴き出す、発する、積む、徹底的、徹頭徹尾、完膚無きまで :くり出す、あふれ出る、あふれ出す、あふれる、こぼれる、吹きこぼれる、流れ出る、流れ出す、湧く、湧き出る、湧き出す、噴き出る、噴き出す、発する、積む、徹底的、徹頭徹尾、完膚無きまで
- 例文は『佐々木と宮野』1巻から。
 
 主人公は宮野。腐男子。
 
 彼が佐々木先輩に、はじめてBL本を貸そうとしているのが引用のシーンです。
 
 長々と、取り扱いのルールが並べ立てられています。
 
 まあBL本なので、取り扱いに注意が必要そうなのは否定できませんが、念入りに用心深く気をつけるべき点を羅列しています。
 
 これが「列叙法」というわけです。

 列叙法の下位分類 列叙法の下位分類
- この「列叙法」は、さらにいくつかのレトリックに分類されます。おおきく分けると、2つになります。1つは「列挙法」のグループで、もう1つは「漸層法」のグループです。
 
 これより下では、それぞれのグループについて書いていきます。
 「列挙法」のグループ 「列挙法」のグループ
- こちらは、「それぞれ同じチカラで」並べていくというグループです。 このグループには、つぎのようなレトリックが含まれます。
 
 まず、当然ながら含まれるのが、- 「
列挙法」:上位にある1つの概念を言うために、その下位にあたることばを並べるレトリック
 
 です。
 
 この「
列挙法」のうち、ならべ方が強烈になると、- 「
敷衍」:必要以上に詳しく並べて述べるレトリック誌
 
 となります。
 
 また、- 「物尽くし(類装法)」:ある種類に属する事物のうちからその典型的なものを列挙してゆく
 
 といったものがあり、この「物尽くし」に含まれるものとしては、- 「花尽くし」:花の名前を読みこんで列挙するレトリック
- 「揃物」:おもに特定のテーマに関する人の名前を列挙するレトリック
 
 のほか、「国尽くし」「貝尽くし」などといった種類があります。
 くわしくは、それぞれの項目を参照して下さい。
 「漸層法」のグループ 「漸層法」のグループ
- こちらは、「順番を付けて、だんだんと」並べていくというグループです。こちらのグループには、つぎのようなレトリックが含まれます。
 
 まず、- 「
漸層法(広義の)」:異なる種類のことばを、段階を踏んで追うように並べるレトリック
 
 があります。
 そして、この「
漸層法(広義の)」に含まれるものとして、
 - 「
漸層法(狭義の)」:ことばを、段階を追って強めていくもの(もっとも典型的な「漸層法」)
- 「
漸降法」:ことばが、段階を追って弱まっていくもの
- 連鎖漸層法:ある文に現れた表現を、次の文の中で反復しながら強めていくもの
 
 があげられます。
 
 ここにあげた「
漸層法(狭義の)」と「
漸降法」は、ある意味で反対の関係にあることが分かります。
 
 また、この「
漸層法(広義の)」に近いレトリックとして、- 「
飛移法」:表現の方法だとか内容の調子を(段々とではなく)急激に変えるレトリック
- 「
頓降法」:段々と盛り上がってきたものが、急に落ちるように展開するレトリック
 
 があります。
 
 「
漸層法(広義の)」の項目に、まとめが書いてあります。また、それぞれのレトリックの項目には、くわしい説明が書いてあります。あわせてご参照下さい。
 
- 列叙法
 
- 累積法・堆積法
 『レトリック事典』(佐藤信夫[企画・構成]、佐々木健一[監修]/大修館書店) 『レトリック事典』(佐藤信夫[企画・構成]、佐々木健一[監修]/大修館書店)
- 「列叙法」に含まれるレトリックは、細かく分類すると色々とそろっています。そういった細かいレトリックの説明までも網羅してある本として、これをあげることができます。
 『レトリック感覚(講談社学術文庫 1029)』(佐藤信夫/講談社) 『レトリック感覚(講談社学術文庫 1029)』(佐藤信夫/講談社)
- まあ実際のところ、そんなに細かく分類する必要はない気がします。なので、この本に書いてあるくらいのことで十分だと思います。なお、『レトリック連環(成蹊大学人文叢書2)』(成蹊大学文学部学会[編]/風間書房) にある、[問題群としてのレトリック(執筆:森雄一)]が、『レトリック感覚』に言及しています。
 「列叙法」と「列挙法」の違い 「列叙法」と「列挙法」の違い
というのは、
「余すところなく並べ尽くすこと」
というような意味なのでしょう、おそらく。まあ、決して直訳ではないけれども。
そしてerschopfendという単語から受けとることのできる、「~をやり尽くす」というニュアンス。そこからは、『レトリック事典』の定義に似たものを感じとります。
 とりあえず結論
とりあえず結論やっぱり、「列叙法」と「
列挙法」とのあいだに違いを見つけるとしたら。「
列挙法」のほうだけが、「残らず並べ尽くす」という意味を持っているというあたりなのかもしれない。私(サイト作成者)は、そのように考えています。
なお私(サイト作成者)は、大学時代の第2外国語がドイツ語だったというだけです。ドイツ語についてのもっとしっかりとした翻訳は、しかるべき人に聞いてください。
- 関連するページ
- 列挙法:あるものごとの要素にあたることばを、つぎつぎと並べる
- 多種列挙:一見するとバラバラに置かれているが実はつながりのある言葉を並べる
- 敷衍:1つの話題についてカタチを変えながら詳しくくり返す
- 点描法:名詞止めの形で、あるものの特徴を並べる
- そのた
- ●勢いに変化をつけ並べる:漸層法(広義の)-漸層法(狭義の)-漸降法