奇先法:先に驚く結論を出し、あとから理由を述べる
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奇先法 きせんほう --

『新世紀エヴァンゲリオン』4巻102~103ページ(貞本義行・GAINAX/角川書店 角川コミックス・エース)
  • シンジ「あの 加持さん
  • ミサトさんは?」
  • 加持「あいつは今夜
  • 晩メシ ヌキだろ
  • 責任者は責任取るために
  • いるんだからな
  • (書類の山)ドサッ
  • ミサト「…………」
  • リツコ「関係各省からの抗議文と
  • 被害報告書は
  • それで全部よ
  • あとこれがUNからの請求書」
-『新世紀エヴァンゲリオン』4巻102~103ページ(貞本義行・GAINAX/角川書店 角川コミックス・エース)
  • 定義重要度2
  • 奇先法は、はじめに、相手が「おやっ」と思うことを述べ、あとから事情や理由を説明して納得させるものです。

  • 効果

  • 効果1まず、結論を突きつけて、人を驚かせる

  • まずはじめに、受け手(聞き手・読み手)に奇抜なことばを投げつける。そのあとで、納得のできる理由を示す。このように意表に出ることによって、強烈な先制パンチの効果があります。
  • キーワード:意表外、思いがけない、思いもよらない、思いの外、図らずも、心外、不測、不意
  • 使い方
  • 使い方1まず、結論を突きつけて、人を驚かせる

  • まずはじめに結論だけを突きつけて、人を驚かせます。この「結論」というのは、なるべく考えつかないようなものを使うのがベターです。
  • キーワード:驚かす、驚く、驚き、はっとする、息をのむ、驚嘆、あっといわせる、注意を引く、着意、気づかせる、気を回す、留意
  • 使い方2その上で、その根拠や説明を示して、納得させる

  • その上で、その根拠や説明を示して、納得させます。この「根拠」というのは、なるべく考えつかないような、それでいて十分な納得のできるものであるということが重要です。
  • キーワード:説明、説く、根拠、理由、納得、分かる、知る、察する、解する、解せる、悟る、うなづく、飲みこむ
  • 例文を見る)
  • 引用は『新世紀エヴァンゲリオン』4巻。

    「エヴァンゲリオン」のパイロットが、シンジ。そして、その指揮をしているのがミサト。

    とある戦闘でのこと。ミサトが指揮をしておこなわれた戦闘で、シンジたちパイロットがミス。そのことをあまり重要だと考えていなかったシンジは「ミサトさんは?」とたずねる。すると、その返事が
    責任者は
    責任取るために
    いるんだからな
    という、ナゾめいた答え。

    でもその次のコマを見ると、山積みになった文書にかこまれたミサトの「…………」というダンマリ状態が見られる(このダンマリ自体は「 頓絶法」にあたる)。

    そして、そのダンマリの理由をリツコが教えてくれています。このリツコのセリフ部分が「後に説明して納得させる」ところにあたります。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1ほかのレトリックとの関係
  • 「奇先法」に似たレトリックを、いくつか挙げてみます。

  • 深く知るa「奇先法と」と「警句」との関係
  • 「警句」との関係でいうと、
    • 短い警句表現のあとに、その説明・理由のあるものが「奇先法」
    • 短い警句表現だけで、その理由などは書いていないものが「 警句
    というふうに分けることができます。しかし、「短いことばで真理を鋭くつく」という点は、両方とも似たような効果が出ます。

    なお。
    『新世紀エヴァンゲリオン』では、
    • 「潔癖症はね、辛いわよ。人の間で生きていくのが。汚れた、と感じたとき分かるわ。それが。」(5巻37ページ/アニメでは14話)
    などなど、「奇先法」とか「 警句」といったレトリックが多く見られます。このレトリックが特に多いのがアニメのほうで、多すぎるあまり、すこし説教くさくなっているほどです。

  • 深く知るb「なぞかけ」との関係
  • なぞかけ」というのは、「○○とかけて○○と解く、ココロは○○」というかたちの「 ことば遊び」です。

    この「なぞかけ」との関係でいうと、
    • たくみに鋭く真理をいうのが、「奇先法」
    • 「ことば遊び」としてもちいられるのが、「 なぞかけ
    と区別ができます。ですが、ばじめに出てくることばが奇抜なものであるという点は、ともに似たものです。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 奇先法
  • 参考資料
  • ●『レトリックのすすめ』(野内良三/大修館書店)
  • 『レトリックのすすめ』という、入門書の感じがする本のタイトル。ですが、「奇先法」について、かなりくわしく書かれています。同じ者の『日本語修辞辞典』(野内良三/国書刊行会)も、あわせてご参照ください。
  • ●『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)
  • 例文をいくつもあげて、分かりやすい説明がされています。例文とともに読みすすめると、理解しやすいのではないかと思います。