新造語法:今までなかった新しいことばを使う
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新造語法 しんぞうごほう neologism

『ぴたテン』1巻9ページ(コゲどんぼ/角川書店 電撃コミックス)
  • 湖太郎「はい 小星ちゃん
  • 当たる番 でしょ
  • 計算ドリル」
  • 小星「う…
  • うおおお
  • おおおお
  • 超萌えーっ!!
-『ぴたテン』1巻9ページ(コゲどんぼ/角川書店 電撃コミックス)
  • 定義重要度2
  • 新造語法は、までにはなかった新しいことばを使う、というレトリックです。そして、そのようにして作られたことばを「新語」といいます。

  • 効果

  • 効果1新しい発想で、独創性をつくりだす

  • いままでなかったことばを思いつく。そのためには、独創性のあるアイディアによって新しいことばや用法を生みだすことが必要です。
  • キーワード:独創性、思いつく、考えつく、発想、アイディア、考え出す、発案、創造

  • 効果2世相や風俗をあらわす

  • 「新造語法」は、その時代の世相や風俗をあらわすことがあります。
  • キーワード:風俗、習俗、習わし、慣習、慣行、世相、世態

  • 効果3時代をあらわす

  • そのことばが使われている時代をあらわすことができます。これについては、「流行語」と重なることもあります。
  • キーワード:時代、今、今時、こんにち、現代、現在、目下、時世、年代、古い、古めかしい
  • 使い方
  • 使い方1従来はなかったモノゴトを呼ぶために作り出す

  • 新しい現象や状況などといったものが登場したとき。そのばあい、これまでの言葉の中には、そういった物事をうまくあらわす言葉もありません。いままでなかったものなのだから、それにピッタリ当てはまる表現が用意されていないのは、しかたがないのです。
    そのため。新しく登場した「モノ」や「考えかた」にたいしては、新しい「名前」をつけてあげることになる。それが、「新語」を作ることになる理由の1つです。
  • 使い方2今までとは、ちがったニュアンスをつけくわえるために作り出す

  • 「ことば」というものは、単に客観的な事実そのものだけをあらわすというものではありません。そこには、「ことばの含み」というか「ことばのニュアンス」というものが、ついてまわります。

    たとえば、
    田舎(いなか)
    ということばには、どうしても「さびれている」とか「文化が遅れている」といったようなニュアンスがあります。どちらかというと、否定的な・ネガティブなイメージを持ってしまいがちです。

    そこで、
    地方(ちほう)
    ということばを、積極的に使ってみる。

    「地方」ということばは、もともとは「方面」「区画」「地域」とかいったいった単語に近いものです。なので、とくに悪いイメージをもっているわけではありません。

    そのようなことを考えて。今までにも、「ほぼ同じ」ことを示すためのことばがある。にもかかわらず、あえて「新しいことば」を使うことがあります。これも、「新語」を使う目的の1つということができます。
  • 使い方3外来語を使って日本語を作り出す

  • もちろん、外来語をカタカナで書きあらわすこともできます。これは、とくに日本語には形容詞が少ないので、外来語から借りてくるほうがよかったという事情もあります。
  • 注意

  • 注意1借りてきた外国語が、日本で違った意味で使われる

  • たとえば、カンニング。この単語は、日本では「試験のとき、隠し持ったメモなどで、正解を知ること」くらいの意味です。しかし英語のcunningは、ずるいとか卑怯とかいうくらいの意味です。カタカナ語だからといって、借りてきた元のことばと同じとは限りません。
  • 例文を見る)
  • 引用は、『ぴたテン』1巻から。

    主人公は「湖太郎」。そして、「小春」は「湖太郎」と同じクラスの女の子。

    「湖太郎」は「小春」に、自分の数学ノートを渡す。そして、「当たる番でしょ、計算ドリル」を言う。
    それに対する「小春」のリアクションが、「新造語法」といえるものになっています。
    つまり、
    超萌えーっ!!
    という部分が、「新造語法」にあたります。それも、こんな短いことばの中に、2つも「新造語法」があります。つまり、
    • 萌え
    ということばづかいが、「新造語法」になります。

    この「超」とか「萌え」とかは、一時代前の「新語」という気がします。コミックスは、わりと「新語」を使うことが多いので、探せばもっと新鮮な「新語」を見つけることはできるでしょう。

    でも、あえて「超」と「萌え」を例にしてみました。
    というのは、なぜかというと。じつは多くの「新語」というのは、すぐに「すたれる」という現象があるのです。一時的にブームにはなったけれども、すぐにだれも使わなくなる。そういったものが、大部分を占めているのです。

    そんななかで。この「超」とか「萌え」とかいうことばは、めずらしく「生き残っていく」可能性のある「新語」だと感じます。多くの「新語」が生まれては消えていくという現代の社会で、もしかしたら数十年後の日本でも使われているかもしれないと思えるのです。

    なので。ちょっと「ありきたり」ではありますが、例文として使ってみました。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「新造語法」がもつ意味
  • この「新造語法」というレトリックは、
    • せまい意味では、
    • いままで全く存在していなかったことばを、新しく作って使用すること
    をいいます。また、
    • ひろい意味では、
      たしかにその語句は今までにもあったけれども、これまでの使いかたとは大きく離れたことをあらわすために使用すること
    ということも含めていいます。

  • 深く知る2「新造語法」の下位分類
  • 「新造語法」は、とりあえず、つぎのように分類できます。
    • 複合語:独立した2つの言葉を、単純に結びつけて1つの言葉にする新語
       (「パーソナルコンピュータ」=「パーソナル」+「コンピュータ」など)
    • 複合語短縮:「複合語」をつくったあと、2語の最初の部分どうしを残す新語
       (「ポケモン」=「ポケ(ット)」+「モン(スター)」など)
    • 派生語:ある言葉に、独立性の低い要素(接辞など)がついてできる新語
       (「コピる」=「コピー」+「する」など)
    • 短縮語:「 語頭音消失」や「 語尾音消失」などによって、すでにある語を短くする新語
       (「ネット」=「インターネット」−「インター」など)
    • サンドイッチ・ワード:1語のなかに他の語を割り込ませて作る、サンドイッチ型の新語
       (——)
    • 頭文字語:単語の頭文字をつかって作る新語
       (「BL」=「Boys Love」など)
    • 逆形成:言葉の成り立ちを誤って解釈したために作られる新語
       (「ハンバーガー」の語源は「ハンブルグ」なので、「ハン」と「バーガー」に分けることはできない)
    • 異分析:「逆形成」に対して、さらに言葉をつけくわえて作られる新語
       (「億ション」の「ション」は誤って独立したものなのに、「億」がつけくわえられたようなもの)
    • 混成語・かばん語:意味の似た2つの語の、1つ目の前半部分と2つ目の後半部分を融合させる新語
       (「ゴジラ」=「ゴリラ」+「クジラ」)
    • さかさ言葉:言葉を、後ろから前に向かって発音すると元の意味が分かる新語
       (「しょば代」=「場所代」など)
    • ズージャ語:語の前半と後半を逆にして組み合わせて作る新語
       (「ズージャ」=「ジャ」と「ズ」を逆転している、など)
    • 濫喩:ある対象を表現するための言葉がない場合に、もとからある語を借りてくる新語
       (「机の脚」で使われている「脚」は、従来、それを指す言葉がなかった) ※「新用語」に近い
    • 接辞添加法:「 接頭辞法」「 接尾辞法」といった「接辞」をつけて作る新語
       (「激〜」「超〜」から始まって、「げろ〜」「ばり〜」「鬼〜」「めた〜」など)
    • 新造語:全く新しく作られ、使われるようになった新語
       (レトリック用語も、多くは、西洋での言葉に対して新しく作った漢語になります)
    • 新出語:もともと「隠語」や「俗語」だったものが、一般に広まって普及した新語
       (「イカサマ」はもともと賭博仲間の「隠語」だったが、次第に新語として普及していった)
    • 外来語:外国語をそのままカタカナにして使う新語で、数はかなり多い
       (「魔法少女リリカルなのは」というアニメがあるけど、どこらへんが「リリカル」なの?)
    • 声喩・オノマトペ:「擬音語」や「擬態語」が、その様子を表現しているものを指す新語
       (電子レンジのことを「チン」といったりする)
    • 音転倒:音がひっくりかえることによって、違った発音が生まれること
       (——)
    くわしくは、それぞれの項目を参照して下さい。

    なお。
    このリストに関しては、『新語はこうして作られる〈もっと知りたい!日本語〉』(窪薗晴夫/岩波書店)を、かなり参考にさせていただきました。

  • 深く知る3「超〜」とか「萌え」とかは、新語なのか
  • 「超」のほうは、細かくわけると、上にも書いたように「 接辞添加法」にあたります。

    ですが、「萌え」は、どのように分類すればいいのか、イマイチぴったりするものがありません。いちおう分類すると、「新造語」か「新出法」あたりなのではないかと思います。

    擬態語」のページでも書いたように、「萌え」という言葉が、サブカルチャーで使われる「萌え」の意味で掲載されている辞書があります。それは『デイリー新語辞典』(三省堂編修所[編]/三省堂)というもの。実際に調べたのは、インターネット上で検索できる「デイリー新語辞典+α」です。

    ちょっと長いけれど、この辞書で「萌え」の部分をひいてみると、このように書いてあります。
    • マンガ・アニメ・ゲームの少女キャラなどに、疑似恋愛的な好意を抱く様子。特に「おたく好み」の要素(猫耳・巫女(みこ)などの外見、ドジ・強気などの性格、幼馴染み・妹などの状況)への好意や、それを有するキャラクターへの好意をさす。対象への到達がかなわぬニュアンスもある。
      〔語源は、アニメ作品のヒロイン名とする説、「燃える」の誤変換とする説など、諸説ある〕

    • 「1.」が転じて、単に何かが好きな様子。または何かに熱中している様子。
    いずれにしても、「萌え」という言葉は、すでに「新語」としての市民権を獲得していると言えます。

    しかし、「萌え」ということばの語源が特定できません。なので、このことばを、上に書いたうちのどれに分類すればよいのか分かりません。

  • 深く知る4「新造語法」による「融合」の度合い
  • また、この「新造語法」によって作られた言葉も、その融合の度合いがあります(ここでは「複合語」を例にします)。
    • かなり新しい言葉で、あまり融合が進んでいないもの
    •  (「オゾンホール」=「オゾン」+「ホール」など)
    • 一般に1語として使われているが、2語の融合だとわかるもの
    •  (「あまがえる」=「あま(雨)」+「かえる」など)
    • 人によっては2つの語が融合したとは思いつかないもの
    •  (「はまぐり」=「浜」+「栗」など)[[li]融合が完全に終わっていて、2語が融合したとは思えないもの
    •  (「なべ」=「な(魚のこと)」+「べ(器のこと)」など)
    どのくらいの融合までを「新造語法」でつくられた「新語」とするかは、はっきりと区別はできません。ですが、最後にあげた「なべ」は、もはや「新語」とはいえないでしょう。

    ひとついえること。それは、ある日突然「新語」が「日常語」としてみとめられるようになるわけではない、ということです。時代とともに、だんだんと人々の生活でも違和感なく使われていくようになった、その結果として「新語」は「日常のことば」になるのです。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 新造語法・新造語・新造語句<
  • 呼び方4
  • 新語法・新語・造語
  • 呼び方2
  • 新語義
  • 参考資料
  • ●『生まれることば死ぬことば』(湯浅茂雄/アリス館)
  • タイトルのとおり、「新語」と「廃語」について、かなりくわしく書いてあります。
  • ●『新語と流行語(叢書・ことばの世界)』(米川明彦/南雲堂)
  • こちらは「新語」だけでなく「流行語」についてもかなり掘り下げた解説がされています。
  • ●『方言学の新地平』(井上史雄/明治書院)
  • 「方言」と「新語」について、ていねいな説明が載っています。
  • 余談

  • 余談1「新造語」は、生き残れるか
  • これより下に書くことは、個人的な意見なのですが。

    一般に。このように「新造語法」をつかって、新しい言葉ができると。
    「ことばの乱れだ」とかいうことになって、批判の対象になったりもします。むやみに新しい言葉をつくるのは、よくないと言われます。

    そして、このことにも一理あります。
    新しいことばが、次から次へと登場してくると。ハッキリいって、覚えるのがメンドウです。かといって知らないと、話し手=書き手の言いたいことがシッカリと分からないわけで、それも困ります。

    ですが。
    在来のことばの中に、ぴったりする言葉がみつからないときには。やっぱり、「新語」を作ることによって対応していくことになります。たしかにそれは、「必要にせまられて」というものばかりではありません。その物事について、話し手=考え手が感じているニュアンスを「よりよく」伝えるために、というときであっても「新語」は使われることがあります。

    そして、それは。話し手=書き手が、その「新語」を使って発信することそれ自体は、まったく自由です。

    けれども。
    いちばん大切なこと、それは。その「新語」を受け入れるかどうかは、聞き手=読み手の側が決めてよい、ということです。このことは、いっぺんに多くの人に情報を伝えることができるようになった現代では、とても注意しなければならない点だと考えます。

    いいかえれば。
    「新語」を、「ことばの乱れ」だと感じるようになる理由。それは、本人が知らなくてもいいような「新語」まで、無条件に受け入れようとするから。そこにムリが生じているからだと思います。

    その人が求めていないような、かかわりあいのない「新語」。それは、その人にとっては「イラナイ」ことばのはずなのです。であるにもかかわらず、「知っていなければならないことば」だと考えて吸収しようとするから。だから、「ことばの乱れ」だと感じる。

    一人ひとりが、
    受け取った情報は「いるモノ」なのか「いらないモノ」なのかということを、すぐに判断する能力。
    そして「いらないモノ」と判断された情報は、すぐに「捨てる」という能力。

    そういった判断能力がないと、目が回ってしまう社会。「情報化社会」というのは、そういうところなのだと思います。

    ……なんか、えらそーなこと書いて、スミマセン。てきとうに、受け流しておいてください。<