数装法:数字に関連したことばを配置して文を整える
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数装法 すうそうほう protimēsis(?)(ギリシア語)

『ひぐらしのなく頃に—綿流し編—』2巻181ページ(竜騎士07・方條ゆとり/スクウェア・エニックス GANGAN WING COMICS)
園崎家当主である
祖母は
村の子供たちに
こう言いました


一人に石を投げられたら
二人で石を投げ返しなさい

二人に石を投げられたら
4人で石を

8人に棒で追われたら
16人で追い返し

千人に襲われたなら
雛見沢の全員で
立ち向かいなさいと
-『ひぐらしのなく頃に—綿流し編—』2巻181ページ(竜騎士07・方條ゆとり/スクウェア・エニックス GANGAN WING COMICS)
  • 定義重要度1
  • 数装法は、数字をちりばめるレトリックです。数字に関連したことばを、文の中にいくつも配置するものです。言いかえると、数字を置いていくことによって、文をととのえることです。

  • 効果

  • 効果1違った色合いを文に加えることで、趣を豊かにする

  • 違った色合いを文に加えることで、風情があり、趣を豊かにすることができます。
  • キーワード:趣、ありよう、空気、風情、雰囲気、色合い、情趣、風趣、趣向、余韻、余情
  • 使い方
  • 使い方1数字にかんすることばを、文章中に散りばめる

  • 「数装法」では、数字にかんすることばが文章中に散りばめることになります。そして文の中にばらまかれた数字が、流れをつくって相手方(聞き手・読み手)に伝えられることになります。
  • キーワード:ちりばめる、ばらまく、織りこむ、折りこむ、加える、つけ加える、組み入れる、組み込む
  • 例文を見る)
  • 例文は『ひぐらしのなく頃に—綿流し編—』2巻から。

    『ひぐらしのなく頃に』という作品群は、ネタバレを嫌うタイプのものだと思います。これからアニメで『—解』を放送することも考えて、ザッパリとストーリー説明を省略します。ご了承ください(2007年5月執筆)。

    そんなわけで、引用した文をみてみましょう。
    一人に石を投げられたら
    二人で石を投げ返しなさい

    二人に石を投げられたら
    4人で石を

    8人に棒で追われたら
    16人で追い返し

    千人に襲われたなら
    雛見沢の全員で
    立ち向かいなさいと

    太字にしたところが、このページで説明していく「数装法」というわけです。

    おおくのばあい「数装法」は、1→2→3→4……、というようなならび方をしているものです。

    ですが今回引用した文は、ちょっと違います。1→2→4→8→16→1000、というならび方をしています。等比数列です。2の0乗→2の1乗→2の2乗→2の3乗→2の4乗、と続いています。

    まあ最後だけは1000ということで、これは等比数列というルールに従ったものではありません。ですが、ここで「1024人に……」とか書き出さないくらいの配慮がある引用文のほうが、自然に読みすすめることができます。「1024」という数字は、出さないのが当然といえます。なにせ、数学の授業じゃないんだから。

    そういったわけで例文は、まちがいなく「数装法」にあたります。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「数装法」を含むレトリックの特徴
  • 「数装法」は、「類喩」のうちで特に数字に関したもの、ということができます。

    「類喩」というのは、ある1つのテーマに関連することばを1つの文の中に色々と使うというものです。ですので「数装法」というのは、「類喩」のうちで特に使われることばが「数字」の場合のことをいいます。

    なお、『日本語レトリックの体系』の説明によると「類喩」には、
    濃淡二重のイメージによる表現効果がある
    とのことです。

    このことを私(サイト運営者)の表現で言いなおせば、次のようになります。

    ようするに「数装法」をはじめとする「類喩」とよばれるレトリックを使った文は、
    • 文をそのまま読んだとおりの、文字そのままの意味
    • 文のなかに隠された、関連することばを拾っていくことによってはじめて気がつく意味
    という、二重の意味を持っている。
    そのようなことが、『日本語レトリックの体系』が
    「濃淡二重のイメージ」
    ということばで伝えたいことだとだと思います。

  • 深く知る2「数装法」と「順位づけ列挙」との関連
  • 『レトリック事典』には、「順位づけ列挙(protimēsis)」なるものが書かれています。この「順位づけ列挙」と「数装法」とが同じものを指しているのかは今のところ不明です。

    ただ「順位づけ列挙」の説明には、「順位は単なるかこつけではない」と書いてあります(345ページ)。そこからは、ちょっとした「数装法」とのニュアンスの違いが読み取れます。

    いずれにしても、今は調査中です。すいません。

    古典ギリシア語辞典で調べてみたけど、載っていないし…。2000ページ以上もあるくせに…。 どこから調べてみたらいいものやら…。つか、ギリシア語なんて文字からして読めないし…。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 数装法
  • 参考資料
  • ●『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)
  • 「数装法」について言及している、珍しい本。